『おふくろの夜回り』とポルベニールブックストア📚

作家、三浦哲郎さんは私の母校である青森県立八戸高校の先輩だ。

三浦哲郎作品と私の出会いは意外と早く、児童向けの物語『ユタと不思議な仲間たち』を小学校の3、4年生くらいの時に読んで瞬く間にその世界に夢中になった。おそらく母が選んでくれた本で、市の図書館で借りて読んだのだと思う。秋田の祖父母の家には子供一人ならなんとか入れそうなサイズの大きな柱があり、そこから自分もどこかへ行けるかもしれないと心底思っていた。通学路にあった田んぼの真ん中の道沿いに建てられた雪が積もった時の転落防止目印の小さな柱ですら、ここならどこかへ行けるかもと見つめずにはいられなかった。

当時は私たち家族は秋田市で暮らしており、その後に青森県八戸市に住むことになるとは誰も予想しておらず、突然父の転職により、私の小学校卒業と同時に遠い親戚のいる八戸市に引っ越すことになった。中学高校の6年間を八戸で過ごしたわけだが、子供の私にとっては初めての「アウェー」。同じ東北なのに言葉もかなり違えば習慣や気質も異なるという文化の違いに戸惑いながらも、そんなことも気にしていられないような受験戦争へと突入していくことになる。

八戸高校で学んでいた頃、有名な卒業生で三浦哲郎さんという方がいらして、小さい頃に読んだあのユタの物語の作者だったことを知った。
ただ前述の通り、とにかく受験科目が普通の子たちの倍はある音楽科受験だった私は三浦哲郎さんについてそれ以上興味を持つ心のゆとりはゼロであり、毎日体力の限界まで受験に向けた準備で磨耗していた。もちろん中学と高校で読んだ本は教科書参考書以外はゼロ冊である。なんとも恐ろしい青春時代だった。

今の私なら、小さい頃に夢中になった作家も学んだ場所にいることにとても深い興味を覚えるし、新しく建て替えられているとはいえ、あの学校までの急な坂を毎日上り下りしたのかなとか、ご存命だった頃にはもしかしたら同じ日の同じ八戸の空気を吸っていたこともあるかもしれないとか、様々に想像を膨らませワクワクするのだが。なんとももったいない青春時代でもあった。

決して後悔はしていないけれど、もう少しだけ私自身の能力が高ければ、学業も演奏もしっかり準備しながらも周りのことに興味を持ち楽しめる時間が生まれたのかもしれないのだが。がむしゃらな努力で能力を補った結果であるので仕方がない。



三浦哲郎さんの話が今出てきたのは、よれよれでぼろぼろな高校ライフの郷愁にひたりたかったからではなく、つい先日魅力的な古書店で三浦哲郎さんのエッセイ『おふくろの夜回り』(文春文庫)に出会ったからだ。数冊まとめて買ったものの中の1冊で何気なく手にし、それほど深く考えもせず購入したものだったが、読み始めてみてこの本が三浦哲郎さんが生前最後に出した本であることを知った。合わせて、本人とそのご家族には数々の大変な時期があったことなども知り、あまりのことにしばし思考が止まった。私は高校時代、あの八戸高校にいながらにして、あの八戸市に暮らしながらにして、何を見てきたんだろうかと「能力の欠如」に深いため息をついた。やはり人間何事も総合力なのである。5教科の点取り魔になったところで、人生はすっからかん。だからどうした、という話なのだ。大人になった今だからこそ分かることだが、あの当時の自分には、まあ理解するのは難しかっただろう。


三浦哲郎さんのエッセイはとても軽やかでありながら軽薄ではなく、切実でありながら重苦しすぎる後味の悪さは一切ない。最後の解説は文芸評論家の秋山駿さんが書かれているのだが、その中にこの本の最後に収められた三浦さんのお姉様についての文の話が出てくる。

「文章が緩んでいないか、いくらか不安だから」
という三浦さんの発言や、毎日書き続けた人生が私の想像の中で巡り、「ああこうやって研ぎ澄まされた文を紡ぐために24時間をそのことに心を砕きながら生きていたのだな」と、今更なことにハッとさせられた。当たり前である、相手はプロの物書きだ。そんなことに今頃気がつくなんて読書好きとは言えん!と多くの文豪たちに呆れかえられそうだが、多分どんな天才でも、文章がいつのまにかニョロニョロと頭から突き出てくるわけではないのだ。日々出来事と言葉について、文章について考え続けているからこそ、素晴らしい化学反応が起き、時を越えて語り継がれる一文が生まれるのだ。

なんで今まで『忍ぶ川』を読んでいないのか、全く意味不明である。今手持ちの本を読み終えたら次に買うのは間違いなく『忍ぶ川』だ。

大丈夫、人生はいつからでも取り返せるぞ。
本を読もう。








今日行った書店は昨年末にオープンしたばかりの新刊書店ポルベニールブックストア (https://www.porvenir-bookstore.com/) 。小さな個人経営の、いわゆる独立系書店だ。選書の良さにあれもこれもと読みたいものが次々に見つかってしまい、買いすぎ注意!とブレーキをかけながらも数冊買ってしまう。小さな書店はこの誰かが選び抜いた本のプレゼンテーションを楽しむのが、たまらなく良いのだ。
ここで買った本と先日の古書店で入手した本をまずは読んでいこう。

それにしても読みたい本は際限がない。人間の時間は限りがある。悩ましいことだ。













Tetsuo Miura who was one of the Japanese famouse writer was graduated the Hachinohe High School in Aomori prefecture and I was also graduated at the same school.
I read his novel for children when I was maybe 8 or 9 years old. I loved this story. But on that days, as our family were lived in Akita prefecture, we could not expect moving to Hachinohe city.
And also I couldn't imagine my high school which was the same as him.

When I was the high school student, I spent the terrible time for my examination for university. It's so hard life. I was always tired evey day for 6 years. I had no time to read except the text for many examinations...
I might waste my young time but I didn't regret that.
I'm reading many books now.

Tetsuo Miura's this essay was full of his heart and his strictly life for his good texts.
He sent us light but not cheaply texts, and he expressed his vividly feeling which had not heavy too much.

I found this book at one of my favorite used book shop.
And I went to the new shop (https://www.porvenir-bookstore.com/) too! The shop had good selected books. I'll go there again.
I bought many books too much but I was happy to find the book I wanted to read!!

After reading these books, I'll read another books written by Tetsuo Miura like "Shinobu Kawa" which is winners of Akutagawa prize which is very famouse prize for novel in Japan.

Ah, I have many books wanted to read...but we have some limited time for reading...
This is a very worrisome and hard problem with joy of reading.





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コメント

いいですね。思い出と共に、手元の本を開くことが出来るなんて、これ以上の幸せはないですね。また、小中高大と私が通った学校には、残念ながら有名な人が出ていないこともあり(私が知らないだけかもしれませんが)、ごく普通の人生を送ってきた私にはうらやましい限りです(笑)。

みーまる 2019年01月15日

素敵なお話でした

Kyo 2019年01月15日

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