ボストン美術館の至宝展
東京会場閉幕ギリギリになってしまいましたが
なんとかいってきました。
これまで実は、ボストン美術館そのものについて注目したことがなかったのですが、
こんなにも素晴らしい美術館だったのかと驚きました。
まずは、市民たちの声から生まれた美術館であるということ。その後もボストンの人たちの芸術への情熱によって支えられ、それが現在まで続いているということ。
場合によっては、運営費などの困難により、なかなか難しい局面に立たされることもある美術館ですが、
そういうことも加味して考えていくと
本当に本当にボストンの人たちの芸術への理解度と愛の深さに、敬意を払わずにはいられません。
日本の貴重な文化財もボストン美術館のコレクションには多数含まれていますが、
例えば《五百羅漢図》は、当初所蔵していた大徳寺が再建資金を必要としていた頃に、フェノロサがボストン美術館にて《五百羅漢図》の44幅を展示する機会を設け、その後売却されることとなった12幅のうち10幅がボストン美術館のコレクションとなったとか。
歴史にもしは禁物ですが、ボストン美術館によって10幅が大切に保管されなければ、今頃散逸してしまい、今日の私たちが観ることも叶わなかったかもしれませんね。
今回は
《施財貧者図(五百羅漢図のうち)》
周季常
(南宋、1184年頃/1面、絹本着色/ボストン美術館所蔵)
《観舎利光図(五百羅漢図のうち)》
周季常
(南宋、1178年頃/1面、絹本着色/ボストン美術館所蔵)
この2幅が来日していました。
ボストン美術館に日本や中国の素晴らしい美術品が多数保存されているのは、中国・日本美術部という専門のセクションが早くからきちんと存在していたから。
そこには岡倉天心の存在も欠かせないことを今回知りました。
1904年にボストン美術館の顧問になった岡倉天心。この時の熱心な働きかけがなければ、ここまでのコレクションが揃うことは難しかったのではないかとも思いました。
と、
ボストン美術館そのものの話で盛り上がってしまいましたが、
もちろん、展示品も、とっても素晴らしく、
かなりすごいコレクション展を観たなあという感じです。今すぐにでもボストン美術館に行きたくなる程です。
ということで
毎度おなじみ
お気に入り作品を発表します。
いやー今回も絞るのは難しかったです。
まずは
《九竜図巻》
陳容が描いた絵巻で
溌墨(はつぼく)という墨を散らすようにして描く技術が多用しながら、龍の様子を描いたものです。
最初の龍は岩から出てきたところ。
最後は岩で休んでいるところ。
この絵は昔は清の皇帝が持っていたとか。
《九竜図巻》がボストン美術館に収蔵されたのは1917年。
この時は、フランシス・ガードナー・カーティスというボストン美術館でも働いていた人の没後の寄付、そして基金のおかげで、コレクションできたものだとフランシス・ガードナー・カーティス基金の説明を読んで知りました。
龍の躍動感、優しい表情、
ごてごてした印象は全くなく、非常に上品な龍の水墨画です。
カッコよく力強い筆の龍の絵もたくさんありますが、《九竜図巻》はパワーで押し切るのではなく、奥行きや深みと共に魅せていく感じがして、私のお気に入り作品になりました。
さて次
《涅槃図》
英一蝶の作品です。
(1713年/1幅、紙本着色/ボストン美術館所蔵)
今回の展示の前に、なんと1年もかけて修復作業が行われたとか。それまで絵の具の剥落の恐れもあり、ボストンでも25年前に展示されたきり、保管されてきたもの。修理が行われたのは実に170年ぶりということで、今年の5月にその修理作業が終わったばかり。
展示室では作業の様子もモニターで紹介されていました。
少し気になったのは、修理前には風帯があったのに、修理後にはなくなってしまっていること。風帯があるとないとでは結構、ぱっと見の印象も違ってきますが、なにか再び取り付けられなかった理由があったのかなあと。
さて絵の部分ですが
涅槃図は仏教の教えを説く絵の中でも、特に何度も描かれてきた場面の図ではないかと思います。
お釈迦様が横になり、亡くなっている場面。
その周りにはたくさんの悲しみにくれる人たちが描かれるというのが、よくある涅槃図のパターンです。
今回もそのように描かれているのですが、とにかく動物たちの表情に釘付けになりました。
嘆き悲しむ様子が、表情で多様に表現されています。
決して号泣するような顔でないものでも、その目とわずかな顔の動きだけで、深い悲しみがにじみ出てくるようです。
かなり大型の作品で見応えがあります。
続いては
《睡蓮》
クロード・モネ作
(1905年/カンヴァスに油彩/ボストン美術館所蔵)
モネの睡蓮は何度か別のバージョンを観てきたと思うのですが、今回観たものが私は最も好きでした。
決して大きな作品ではないのですが、見れば見るほどその色彩の美しさに心を奪われます。
モネの《睡蓮》全作見比べ、とかあったら、面白いだろうなあ。
今回の展覧会では近現代の作品も多数並び、とても素晴らしい展示でした。
チャールズ・シーラーという画家を私はこれまで知らなかったのですが、今回その作品に触れて、とても興味を持ちました。
《ニューイングランドに不釣り合いなもの》
チャールズ・シーラー作
(1953年/カンヴァスに油彩/ボストン美術館所蔵)
写真家でもあり画家でもあるチャールズ・シーラー。
この絵はとてもシンプルに、様々な要素が削ぎ落とされた状態で、それでいて単純なだけではない魅力に溢れています。
写真家で絵も描いた人といえば、最近実物を観た個展の中だとソール・ライターなども、絵も写真もどちらも素敵でしたが、
絵も写真もという人は意外と多いかなとも思いました。ニューカラーの大御所、ウィリアム・エグルストンもパリの写真と共に絵を描いたものも一緒に展示、写真集にもまとめていたり。
写真としての写真なのか、アートとしての写真なのか、
一言で写真といっても様々な方向性がありますね。
写真といえば
アンセル・アダムスのプリントを今回観ることが出来たのも、とっても嬉しかった!!
いつかぜひ観たいと思っていたんです。
自然をたくさん撮影した(なんて乱暴な説明でしょう😅)アンセル・アダムスですが、
今回の展覧会では3点のプリントが並んでいました。
一番好きだったのは《レッドウッド、ブル・クリーク低地、北カリフォルニア》という作品。
モノクロで、とても静謐な印象。
とても手が出るような値段ではないはずですが、うちに飾りたい〜と思ってしまいます。
最後は
《ギャロービー・ヒル》
デイヴィッド・ホックニー作
(1998年/カンヴァスに油彩/ボストン美術館所蔵)
独特の色彩で描かれた風景画です。
その色彩のバランスがとても心惹かれる作品でした。
現代アートも、もっともっとたくさん観たい!!
ということで
ざっとですが絞り込んだお気に入り作品を並べてみました。
都内での展示は終わってしまいましたが、この後は神戸市立博物館に巡回、その後は名古屋に巡回予定があるようですので、お近くの方はぜひ!
音声ガイドも借りましたよ。
ナビゲーターは竹内結子さん。
とっても聴きやすいガイドでした。解説内容がしっかりと頭に入ってくるナレーションで、堪能いたしました😍展示室が混雑しているときも、解説ボードの前で無理やり解説を読む時間を作ることなく、竹内結子さんの声に導かれながら、作品を楽しむことができます。音声ガイドもオススメです💕
というわけで
レポが遅くなってしまいましたが
アート鑑賞
2017年の59件目
10月の5件目でした🖼
ほんと、今月は観たい素晴らしい展示がたくさんありすぎて
嬉しい悲鳴です。全部いけるのか?!
沢山の作品との出会いで、いろんな感性が刺激されそうですね。また、次には、何か自分でも作りたくなるかもしれませんね(^0^)。