Louise Lawler ルイーズ・ローラー

Louise Lawler の "An Arrangement of Pictures"(Assouline) を読み終え、彼女にまつわるインターネット上にある動画もいくつか観た。

この本は主人の誕生日プレゼントの一つとして、私のお気に入りの古書店SO BOOKSの店主、小笠原さんに相談しながら選んでみたものの中の一冊なのだが、
プレゼントする前に私自身が気になって、すっかり夢中になって読んでしまった。

日本語表記だと、「ルイーズ・ローラー」となるのが一般的のようだが、インターネット上だけで見る限り、一般的と呼べるほどの数の記事がヒットしない。

2015年に京都国際現代芸術祭で展示を通して取り上げられていたようなのだが↓
http://www.parasophia.jp/artists/louise_lawler/

彼女について日本語になっている情報はとても少ない。

そんなわけで、この本に書かれた寄稿文とインタビュー記事がそれほど分量も多くなかったため、せっかく英語の先生も身近にいることだし、このわからない部分が質問できる状況を活かして、精読してみることにしたのだ。(私が受けている英語のコーチングクラスは、先生から宿題が出されるのではなく、自分で課題を見つけて取り組むスタイルのため、こういう時にはピッタリである)。


Louise Lawlerは写真を使って表現を続ける現代美術家だ。彼女はアメリカ、ニューヨークのBronxville(ブロンクビル)で生まれ育ち、今もニューヨーク在住で制作を続けている。
コーネル大学でBFAを取得し、卒業後は80年代初期からニューヨークのみならずヨーロッパでも展示をスタートさせ、1982年からはニューヨークのMetro Picturesという大きなギャラリーでの取り扱いアーティストにもなっている。
Metro Pictures
https://www.metropictures.com/
(あら大変、いま展示中のRoert Longoもすごく観たい😅あー知りたいこと観たいものだらけで困るわあ)

Metro Picturesによる彼女のページはここ
https://www.metropictures.com/artists/louise-lawler

ニューヨークMoMAでの個展の時にも出ていた作品が写真で紹介されている。


この後も華々しい経歴が続くわけで、プロフィールだけを見ていくととても順風満帆なアーティスト人生を歩んでいるかのように見えるのだが、Douglas Crimpによるインタビュー記事や、Johannes Meinhardt(translated by Fiona Elliott)による寄稿文を読むと、時代背景や場所が持つ特性により様々な困難に直面することもあったようだ。


そもそも第二次世界大戦後、アートの一つの流れを強く推し進めてきたアメリカ、特にニューヨーク周辺に私が興味を持ったのは、ゴードン・マッタ・クラークというアーティストを通じてだった。
彼の回顧展が去年、東京国立近代美術館で開催され、展示を観ていてワクワクとニヤニヤが止まらず、こんな面白いアーティストがいたんだ!と彼が生きた時代と場所にも非常に興味を持ったのだ。
残念ながらゴードン・マッタ・クラークは1978年に膵臓癌で亡くなってしまい、若くして失われた才能となってしまったが、Louise Lawlerが活躍するのは1980年代初頭から。時代は繋がっている。

そのことを再認識させられたのはLouise Lawlerの"Birdcalls"という作品だ。
これは音の作品なのだが、鳥の鳴き声のような音で当時著名作家として認識されていた多くの「男性」アーティストの名前が連呼されている。
「ウォーホル、ウォーホル」とか「ホッパー、ホッパー」とか。

ハマー美術館のページにまとまった紹介があるが
https://hammer.ucla.edu/take-it-or-leave-it/art/birdcalls/
ほかにも検索すると出てくるので興味がある方はぜひ動画を調べてみてほしい。

これはとある展示にノミネートされた作家が全員男性アーティストで、女性アーティストが一人も含まれていなかったことから生まれた作品で、
この作品の中で呼ばれる名前に含まれるSol Lewittが収集した作品でもある。(Sol Lewittは鳥好きらしい。もちろんその理由だけで収蔵したわけではないだろうけれど)。

"Birdcalls"はもちろん、社会批判的特性を持つ作品だし、彼女は他にも社会に対して疑問を投げかけるような作品も多く発表しているため、そういう社会批判をアートで提示する作家のようにも語られがちだが、実は彼女には違う側面の作品もあり、それが今回読んだ本の中心となっている作品群だ。

"An Arrangement of Pictures"は
カタカナ混じりにしてしまえば、写真のアレンジメント、つまり写真を使って作品がどう飾られているのかを考察した作品群なのだ。
作家が作った作品はギャラリーなどで販売され、その後個人のコレクターの家や、美術館などに飾られる。

彼女が言いたかったのは、その飾り方を批判しているのでも、作品売買のシステムに疑問を投げかけているわけでもなく、単に作家の手を離れた作品が置かれた状況を俯瞰して見たときにどんな感情や印象を鑑賞者に与えるのかという実験的な行為、なのである。
その実験を写真を通して行うことで、ある一つの作品が飾られた状況を、さらに写真という枠で切り取ることになる。
写真も現代アートとして語られるようになった現在、こうなるともはや、どこがどう作品なのか、混乱してくる。写真に写っている作品こそが作品なのか、いやいやそれを撮影しているからその最終プリントが作品であって写っているものは作品ではないのか。(何千万円、何億円の絵画などが写っているのだけれど)。

他にも、全く同じ2枚の写真に、全く異なるタイトルを付けたり、枠だけをなぞって線画にしたものがあったりと、
人はどういうものを(偉大な)作品とみなすのか、事前情報(タイトルなど)とイメージ(作品そのもの)の間にある相互作用は何なのか、作品を観る行為そのものにまつわる様々な疑問を、彼女は常に実験的な姿勢を失わずに提示し続けている。

Louise Lawlerは、世の中で広く謳われている当たり前なことは、本当?あなた自身は本当はどう感じるの?という問いを感じさせてくれる作家だ。

大きな荒波に飲まれそうになった時、彼女の作品を思い出して、勇気をもらおう。
本を通じて良い作家を知ることができた。
もちろんいつか作品を実際に観たいと思うし、ご本人にもお会いできるチャンスがありますようにと願う。その時に恥ずかしくないように今の私はまずは頑張って学び続けなくては。












I bought this used book "An Arrangement of Pictures" by Louise Lawler at my favorive book shop "SO BOOKS".
I talked with Ogasawara-san who's the owner of the shop, and I decided to gift this for my husband's birthday.

I had never seen this famouse artist's work.
Louise Lawler is one of the important contemporary artist. Her works gave me confused, but I felt excitement about her expression at the same time.
Unfortunately her works were so little introduced in Japan and by Japanese language.
I found one article by Parasophia(in Kyoto)2015, but it was not enough.
http://www.parasophia.jp/artists/louise_lawler/


That's why, I read this book in English, contained many her works images, interview by Douglas Crimp and contribution by Johannes Meinhardt.
And more, I watched some movies(almost Youtube) that talked about her exhibition or discussed by some critics, curators and herself.

When I saw her career as artist, her artist life seemed to be all plain sailing. But after I read some articles, I changed my thought.
She started her artist life since about the nineteen-eighties. In that time around New York, many artist had been expressed "nonstandard" works by themselves(in artist run space, werehouse, vacant...)

When I saw a retrospective exhibition by Gordon Matta-Clark at Tokyo, I interested to him and these area and the time.
Although he died in 1978, but the tendency about new art was continued, and Louise Lawler started her career in nineteen-eighties.
They tried to find something new in New York.


After my learning by this book and articles at online about her many series of works, she gave me some important suggestions through her actions and works.
"Is it truth that the brightly something made much of in the society?" "Is it interesting in my heart?" "Is it really important for me?"
When I rose my way, I'll recall her works.
Through this book, I met great works.
But of coures I want to see her works in person, and I want to meet her. So now, I have to learn more and more, especially English!

コメント

近い将来、作家ご本人と会える機会があるといいですね。そして、そのためにも、これからも多くのことを学ばなくては、ですね。頑張って下さいね、まりさん。

みーまる 2019年05月13日

お久しぶりのコメントありがとうございました。
待ってました。
いつもハイクラスな内容でテンションが上がります。
これからもよろしくお願いします

Kyo 2019年05月13日

不適切なコメントを通報する

最新ブログ

感謝の気持ち
目に見える変化と見えない変化
紙コップを考える
プラスチックフリーを意識した暮らし