ピエール・アレシンスキー展に行ってきました。
ピエール・アレシンスキーは
現存するベルギーの現代アーティストです。
日本の書道に影響を受けているというピエールの作品は、
ある時から床に紙など描く支持体を置いて描く技法になったとか。
あのお正月なんかで
大きな紙に書道家の先生が
パフォーマンスしながら紙の上を移動して書いていく
あんなイメージですが
ピエールが描くスタイルもそれに近いものがあるようです。
ブリュッセルの国立美術学校で印刷、本の装丁、挿絵を学び、
なおかつ左利きを矯正されて文字は右手で、絵は左手でというピエール。
左利きだったことから図像を鏡像化していく版画が、自分に向いていると気がついたとか。
若い頃の作品は版画作品がとても多いです。
展覧会の最初に登場する
版画作品の
《職業》のシリーズは
どれもユーモラスで可愛らしくもあり、
家に飾りたいなあと思うもの。
《職業》を小さめのサイズでシリーズ化して、というので
レオナール・フジタの《職業》のシリーズを思い出しました。これも本当に可愛く、欲しいなあと思うものばかり。
箱根のポーラ美術館のコレクションで観たものです。
ピエール・アレシンスキーの作品が、
素晴らしいから、という理由もあると思いますが
わたし、版画が結構好きなのかも。
ピカソも版画でいいなあっていうのが記憶に残っているし。
アルブレヒト・デューラーの版画も好きなものが多いです。
さて
版画作品ののち、
日本の書道に影響を受けたピエールは
墨を使った作品、
支持体も和紙や中国紙を使った作品などが並ぶようになります。
時代が進むにつれ、
作品の大きさも大きくなり、
色もモノクロの世界から、色が増えていきます。
心から湧き出るエネルギーを
思いっきり描きつくしているピエール。
その中で
アメリカのコミックに影響を受けて、
絵を漫画のように枠で分割したり、
祭壇画の下に描かれるプレデッラの技法を取り入れたり
マックス・エルンストのフロッタージュ(でこぼこしたものを紙の下に置いて、上から擦ることで下の凹凸を写し取る)を取り入れてマンホールをフロッタージュしたり。
次から次へと様々な試みを取り入れていきます。
全部で80点もの作品が並び、
2015年、昨年できたてほやほやの新作まで揃っていた今回の展示。
この中から 今回も
お気に入り3つを
最後に並べてみます。
《氷の目》
グリーンランドの航空地図の上に、黒のインクと太い筆で目が描かれたもの。
他にも地図の上に描かれたシリーズが何点か並んでいたのですが、このグリーンランドのものが一番好きでした。
寒い寒いグリーンランド、その土地の真ん中あたりに巨大な目。航空地図の淡い色合いと黒の絵のコントラストもインパクトがありました。
《プリズム》
滝をカラフルに表現した大型の作品。
色彩が清々しさも感じさせ、他の作品の重苦しさとはちょっと違った印象。
家が巨大だったら飾りたいなあと思う作品。
《いいえ、私は・・・》
抽象的でありながらも、人間全身を描いていると、比較的わかりやすいもの。
その中で、身悶えする心のうごき、もやもやした気持ち、葛藤などが、小さな画面に凝縮されているようです。
画面が小さいのに、大きな表現を感じさせる作品。世の中スッキリしないことが多い、その中での軋轢に耐える人、そんな感じ。
ということで
ピエール・アレシンスキー展的に代表作的な扱いをされているもの(パンフレットや雑誌で展覧会紹介の際に使われるイメージなど)が
最後3つに全く入らなかったのですが、
代表的なものももちろん、魅力的でした!
今回、音声ガイドがなかったのですが、
あったらもっと、現代アートに馴染みがない人も、深く楽しめたのかも?なんて思いました。
やっぱり
現代アートにも、
好き嫌いもあるし、
なんとなく、わかりづらい、
どこがいいのか、落書きみたいでよくわからない、という意見も多く聞くので、
現代アートを見慣れていない人、初めて現代アートをみたのがピエール・アレシンスキー展だったという人にも、
現代アートって面白い!というのがたくさん伝わるといいなあと。
現代するアーティストの作品を
若い頃のものから、つい昨年描かれたものまで、
その変遷を辿りながら観られる展示というのは
とても貴重だと思います。
そして今もなお、ピエールのアトリエでは
展覧会に展示されていた2015年の作品の次、
今年の作品が生まれ続けているのです。
同じ時代を生きるアーティストだからこそ、共感できる感覚もあったりします。
今という時が
アーティストに何を表現させていくのか。
ピエールがこれから先
何を描いていくのか
展覧会の続きを目撃していくのも
楽しみです。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/16_alechinsky/
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