観劇「秋のソナタ」

昨日は東京芸術劇場に〝秋のソナタ〟を観に行きました。キャストは佐藤オリエさんと満島ひかりさんのお二人のみ。
静寂。数秒の間。閉鎖的な精神にもかかわらず、解放されたように自由な空間。揺れるロウソクの炎。響く音。反響する余韻。息づかい。
愛されたい苦しみと、許せない憎しみを惜しみなくはき出し、愛しているのに愛せない矛盾と戦い、母と娘の深い確執を見ました。これもまた、歪んだ愛でしたが、納得できる人間の本質的な闇を親子関係で描いていました。
娘のエヴァは、ママと何度叫んでいただろうか。それは悲痛な叫びでもあり、愛して欲しいと訴えている心の声のようでした。
母は、背中が痛いと何度口にしていたのだろうか。重くのしかかる現実に耐え、受け入れる度量のなかった母は、愛しているという言葉のかざりで、母を演じるのがやっとだった。非情で、自己中心的な母もまた、孤独をかかえていたのかもしれない。どちらの気持ちも痛いくらい胸に刺さるものがありました。
壮絶な心のうちをはげしく言い合い、お互いの憎みをすべてはき出したあと、二人はケロッと日常に戻り、エヴァは母に手紙を書き、母はまた開き直って日常に戻っていたので、これがまたリアルな女性の強い部分というか、どんなに愛と怒りがせめぎ合っても母と娘という切っても切れない関係を表しているようでした。
文学的で、ピアノの演奏のように楽譜からこぼれ落ち、絶妙な波長にのせ波うちながらときに激しく、そして繊細な舞台でした。
無駄のない洗練された空間のなかで、激しく、静かに燃えるロウソクのともしびのような作品を見た気がしました。
佐藤オリエさんの、背筋のシャンと伸びた立ち姿や声色の幅や声量は圧巻でした。満島ひかりさんは、エヴァの心の一人の自立した大人とまだ母を求める子供のままのエヴァになるニュアンスが絶妙でした。
脚本、演出、女優のおふたり、ほんとうに素敵な舞台でした。

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