「森博嗣に音楽のエッセイを依頼するなんて発想がかなり突飛だ、と思ったので敬意を表してお引き受けすることにした。」
表紙のイラストや色調もモナリザっぽいのにシュールで
パンチの効いた文をさらにスパイシーに演出しています。
『DOG&DOLL』(講談社)
森博嗣さんの本で
2008年1月10日から2009年1月1日まで
TOKYO FMの携帯サイト「MUSIC VILLAGE」に連載されたものを単行本化。
その文庫化されたものを今回読みました。
森さんは音楽は好きだけれど
語る程ではないとおっしゃっていますが、
どうやら曲名や作品に詳しくないというだけのことのようで、
実は「音」そのものには結構こだわりがあるようです。
「僕はドライブが好きだけれど、運転中に音楽を聴かない。だからカーステレオを付けていない。運転中はエンジン音が聴きたいからだ。歩くときは、やはり自然な綺麗な場所で、鳥の声やせせらぎが聴きたい。嫌な音がする場所へな行かないことにしている。」
自然の中にある音、雨音とか、風によって木がそよぐ音とか、
ありのままの音をありのままの姿で楽しむこと。
「また、僕の場合はむしろ逆で、エンジンの音を聴いていたい、と思ってしまう。ドライブするときは、エンジン音が唸っていることが大事で、それが聞こえないと、車の魅力が半減する。」
以前アメリカ人の女性がやはり同じようなことを言っていました。
最近の高性能の車は音がしないから運転している感じがしないと。
電車に乗っていても、がたんごとんとか、ざざざーとか
走ることで出る音がありますが、
確かにこれが静かになったら…
不思議な乗り物に乗って運ばれていっているような感じがするかもしれませんね。
また、森さんは
音楽とスポーツも強く結び付けてお話されています。
「そう、音楽とスポーツはとても似ているのだ。自分に合ったジャンルを誰もが見つけられるし、好きなジャンルで上手いプレイヤに憧れたりもする。」
「音楽は、時間をたっぷりつかってゆっくり出力することができない。ここがスポーツと同じなのだ。」
妙に説得力があります。
音楽とスポーツを繋ごうなんて考えたこともなかったけれど
夢、とか、原動力みたいな部分で
どこか共通しているのかもしれません。
自分を奥床しいと言いつつも、歌が上手いと言い切る森さん。
でも嫌な感じが一切ない。
多くのゲストとの対談もテンポよく楽しいものばかり。
ステキでシュールで力強い個性的魅力にはまりました。
今日のお話で、初めて電気自動車に乗った時の
ことを思い出しました。
そして、未来というのは、音の少ない時代となっ
ていくのでは、と、良い意味でも、悪い意味でも
なく思ってみたりしたものでした。。。