大切にするということ『空の中』

先日読んだ『海の底』という有川浩さんの小説が面白くて
他にも何かないかなあと調べてみました。
色々ある中からプチ解説を読み、たどり着いた本が
今回読んだ
『空の中』(メディアワークス)。
実は先に『クジラの彼』という短編小説を見つけたのですが、
この短編の中には『海の底』と『空の中』からの、それぞれのその後の物語が描かれているというじゃないですか。
それを知ってしまったからには
先に『空の中』を読むでしょう、やっぱり。

前回は海の底からやってきた未知の巨大ザリガニが
人々の脅威となり、事件が起こるというストーリーでしたが、
今回はテーマは空。

空の上、遥かかなた上空の高度2万メートルに
ひっそりと暮らしていた謎の生命体が登場します。

人間は地上に近い所で生活してきましたが、
文明が発展するにつれて、だんだんと高い場所までやってくるようになりました。
これまで通りならば接触することもなかった
高度2万メートルに住む謎の生命体。
それが飛行技術の進化に伴い、接触し、事故が起こることになります。

謎の生命体が飛行機との接触事故を起こしたことにより
偶然地上に剥がれおちたものが、
高地で斉木瞬という少年に拾われます。

この謎の生命体は意思を持ち、携帯電話の電波をジャックして
瞬とコミュニケーションがとれるようになります。
フェイクと名付けられ、ペットのように可愛がられている日々でしたが、
さらなる事件が起こり、瞬もフェイクもその事件に巻き込まれていきます。

誰も知らなくて怖くて路頭に迷っていた所を
拾われて、大切にしてくれた瞬のことが
大好きになったフェイク。
瞬が喜ぶことがしたい、瞬に気に入ってもらいたい、
瞬のことが好きだから、何をしたら瞬は嬉しいと思ってくれるんだろう
そんなまっすぐに瞬を疑わない気持ちのフェイクは、
瞬が素直になれないことに対しても
発せられた言葉を純粋に信じるだけで、
どんどん辛い方向へ進んでしまいます。

フェイクの瞬だけを見つめるピュアな気持ちが
話しが進むにつれて、ずんと胸に突き刺さってくるんです。

最後の最後、事実を知ってまでも
それでも瞬を裏切れないと思ったフェイク。

誰かを大切に思う気持ちに触れられる作品です。
この作品には、人それぞれの大切さの表現方法と、
どれが正解だとは断言できない、愛情の形が散りばめられています。








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