Reciprocal Reliance curated by Curate It Yourself @SCAI THE BATHHOUSE

美術の展覧会では作品そのものの素晴らしさや力強さも重要だが、それらをどう「見せる」のかという点も非常に重要だ。「見せ方」は鑑賞者に与える印象を大きく左右することがある。

美術展ではキュレーターと呼ばれる役職の人が活躍していることが多く、良い展覧会になるかどうかはこのキュレーターの手腕によるところも大きい。
キュレーターは料理人のようなもので、材料(作品)を最高のメニュー(展示の企画)に仕上げて、テーブル(展示室)に並べていく。料理をどの順番で出すのか、ビュッフェ式ならどの料理の隣にどの皿を置くのかも非常に重要だ。最高の食材も料理の腕次第では残念な結果になる。


谷中にあるSCAI THE BATHHOUSE(スカイ・ザ・バスハウス)での展覧会

「レシプロコル・リライアンス(相互依存)」
"Reciprocal Reliance" curated by Culate It Yourself

の初日に行ってきた。


今回の展示は
アンヌ=シャルロット・フィネル(Anne-Charlotte Finel)、
エンツォ・ミアーネス(Enzo Mianes)、
アンヌ=シャルロット・イヴェール(Anne-Charlotte Yver)
の3人の現代アーティストによるグループ展だ。
しかし単に3人のアーティストによる各々の作品が並べられているのではない。展示タイトル「Reciprocal Reliance(相互依存)」にもあるように、それぞれの作品は密接な関係を保っている。個々の作品は強い個性を保っていながらお互いに影響せずにはいられない、不思議な距離感を構成しているのだ。先に言ってしまえばこの展示は実に見事なキュレーションだった。企画を担当した「キュレート・イット・ユアセルフ(Curate It Yourself)」がとても気になった。調べてみればウェブサイトがあった。

https://curateityourself.com/

パリを中心に活躍するキュレーター集団で、若いアーティストたちと共に挑戦的な展示を作り上げているようだ。フランスのアーティストたちを世界へ、そして世界の他の国々のアーティストたちをフランスでキュレーションするという彼らの活動は、つまり今回はフランスを飛び出して、ここ日本で達成されたということだ。




この「Reciprocal Reliance」展では
映像、立体、音がそれぞれに強い主張をしながら空間を支配し、その存在感は空気の隅々までを埋め尽くしていた。

正直、展示を見始めて10分くらいは、必死に展示の解説文を読み、混乱し、不安の穴に落とし込まれていた。どうしよう、微塵も理解できないかもしれない。
大体の展示では最初は分からなくも、解説文を読むことヒントを得て、作品の中に隠された糸口を見つけ、ミステリー小説の終盤のように面白さや答えを発見していくのだが、今回は「事件解決」までに少し時間を要した。
はて困った、わからない、と思いながらも全体を俯瞰し、そして一つ一つの作品をじっくりと観ていく。
そして最後に降参かなあと思いながら、再度展示の説明文を読み直し、展示室全体を眺めた時、ようやくはっとさせられた。

細かい一つ一つの作品にに気を取られてしまい、こんなわかりやすく見せていたものを見落とすとは。
展示室に入って正面にある大きな映像。
アンヌ=シャルロット・フィネルの《Cathédrale》とい作品だ。カテドラル、つまり聖堂だ。しかしそこに映し出されているのは巨大な工業地帯にあるような工場の外観である。細長い電気が所々に付けられた無機質な工場を様々な角度から、時に煙に隠れそうになりながら映し続けている。

そしてその映像の手前には





透明なパイプを使い、中に塩酸と金属を入れたアンヌ=シャルロット・イヴェールの作品《Membre3, section7, subdivisions 3/4/5》があり、その透明なパイプと中身は工場の中にある何かの製造工程の一部分にも見えてくる。






さらにこのパイプの作品のすぐ近くには








アンヌ=シャルロット・フィネルとアンヌ=シャルロット・イヴェールの2人による映像作品《Reciprocal Reliance》という映像作品があり、先ほどのパイプに入っていた黄色の液体と同じような色の液体と、その中で気泡を上げながら何らかの化学反応(溶けている?)が起きている様子が映像として映し出されているのだ。

工場を映し出した大きな映像から、どんどんと紐が解けるように、発見が出てきた。
展示室の上を見ると、張り巡らされた金属パイプのようなものもある。工場内部に入り込んだかのような気分はここからも受け取ることができた。
工場、と思いもう一つ、エンツォ・ミアーネスの《Mindscape》が工場の映像のやはり近くにある。





円形の穴が大きく空いた作品だが、私は個人的にはゴードン・マッタ=クラークが埠頭の倉庫の壁に大きな穴を開けた《Day's End(日の終わり)》という1975年の作品やその他彼の数々の壁の穴を思い出してしまった。
意味は全く別のものだし、《Mindscape》の方が整然とスマートに周りと「接続」している。ゴードン・マッタ=クラークのようなある意味力技での豪快さとスカッとした痛快さのようなものではない。《Mindscape》はもっとエレガントな作品なのだ。しかし完璧な円を観ても私の頭が反応を起こしたのはアニッシュ・カプーアではなく、ゴードン・マッタ=クラークだったのは、やはり工場というイメージと、既存の枠に囚われない勢いを展示全体から感じていたからかもしれない。

(ちなみにゴードン・マッタ=クラークも厳密に言えば「工場」ではなく「民家」とか「アパート」とか「倉庫」とかなんですが・・・)


展示物を照らすための照明は無く、ほぼ映像が発する光のみで構成されている。


ただ、アンヌ=シャルロット・イヴェールの《Membre3, section7, subdivisions 1/2》というもう一つのパイプの作品の近くには、よく見ると細長いライトが2箇所付けられている。






これらの細い光は、映像に出てきた工場のあちこちに光っていた照明の形にそっくりだ。
この光の仕掛けを見た時に、どうやら工場の中に入ったような感覚というのは間違いなさそうだと再認識した。


こうして一つ見つかると次々に見えてくる連想ゲームのように、近くにある作品同士、そして同時に目に入る範囲の作品同士が関連し合うことが見えてきて面白い。しかし個々の作品はあくまでもそれぞれの強さを保ったままでもある。
なにかを生み出して空間に置いた時、その物がどんなに独立性を主張しようとも、周りにある全てのことと無関係ではいられない。
関係ない、と述べている瞬間にもすでに、世界のあらゆることとべったりと関係があるのだ。嫌でも。

押し付けがましくないのにしっくりと来る音も素晴らしかった。それぞれの音はこの展示に必要不可欠であり、重要な空気感を満たす役割を果たしていた。わざとらしくならずに、その関係性を的確に表現する音、というのは本当に難しいものだが、さりげなく軽やかに音を存在させていた。それぞれの映像音楽を担当したルーク・ケラドマンドにも今後注目していきたい。



オープニングの日だったが行った時間が当たりだったのか、ひどい混雑もなくじっくりと展示空間をしばし堪能した。この展示は静かな時間帯を狙って、一人でゆっくりとこの展示空間に自分を浸して味わうのがいいかもしれない。
私は今回は時間の都合でこの展示だけを観てこのエリアを後にしたが、近くには大きな美術館や博物館もあり、反対側には書店やカフェが多い谷根千エリアもあるので、散策や美味しいランチとともに1日楽しむコースにも組み込める場所だ。近くまで行かれる機会があれば是非立ち寄ってみてほしい。スカイ・ザ・バスハウス、その名の通り、元お風呂やさんだったという建物も必見。

現在開催の展覧会については公式サイトをご参照下さい(ギャラリースペースが天王洲と谷中の2箇所あります。今回の展示は谷中です。ご注意ください。)

https://www.scaithebathhouse.com/ja/














Of course it's important that the art works have strong body structures and a great impression on the audience. But the way of showing of the works is of the same importance as that power in the works. It makes many effects on audience.
The curators play on the art exhibition. They play important roles. The curator is like the cook. They use many good materials(art pieces) for dinner(art exhibition). If they fail their cook(curation), many good dishes(works) are gone (not presented anything, it's terrible exhibition).



Today was the first day of a group show at SCAI THE BATHHOUSE (yanaka,Tokyo,Japan).

https://www.scaithebathhouse.com/


It's one of my favorite gallery. I usually go to see many good works on the first day of the exhibition.

Now, "Reciprocal Reliance" that was a group exhibition by French artists Anne-Charlotte Finel, Enzo Mianes and Anne-Charlotte Yver started from 25 January,2019.
This exhibition was curated by Curate It Yourself(CIY). I saw their curation at the first time. It's great work.

About CIY
https://curateityourself.com/


At the first time, I couldn't understand about these works and this show.
But I watched this for a while, suddenly I could see many things on this show.
First, I realized the factory in the movie《Cathédrale》by Anne- Charlotte Finel.
And next, I saw the Anne- Charlotte Yver's cleared grass pipe work. It's connected by the word "factory". And Finel's another movie 《Reciprocal Reliance》was also connected too.
《Mindscape》presented by Enzo Mianes remined me 《Day's End》by Gordon Matta-Clark although he used the wall of empty warehouse, not the factory.
I could find two lights like the factory's one in the movie work.
And the sounds with these movies were good. It's difficult to express by the music(sounds)for art works. It kept the good balanced air for this exhibition.

コメント

まりさんも美術に関して、沢山の知見をお持ちなので、まずは旦那さんの作品のキュレーターになってはいかがでしょうか。。。

みーまる 2019年01月26日

凄いですね。

Kyo 2019年01月26日

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