昨今のプロジェクション・マッピングの投影イベントや、チームラボの目覚ましい大躍進により、
日本にいながらでもアートの新しい表現に気付かされた方も多いことだろう。
映像や光もアートになりうるのだと認識した途端、今まで見過ごしてした過去と今周りにあるものが気になり始める。
作家側も作品発表の場をギャラリーや美術館展示、現代アートの祭典など彼らの本来の活躍の場だけに限定せず、大掛かりな街のイベントとコラボレーションする作家がいたりもするため、現代アートは全然わからないから見ないと思っていた人でも、綺麗だなと思って楽しんだイルミネーションイベントが実は現代美術家が手がけた作品の一部であった、などということもあるかもしれない。
最近観たのはSHIMURAbros (シムラブロス) の作品だ。
箱根にあるポーラ美術館で観てきた。
SHIMURAbros
http://shimurabros.com/
ポーラ美術館 アトリウム ギャラリー
SHIMURAbros ーFilm without Film
http://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20181208ag01/
SHIMURAbrosは横浜市出身で、姉と弟による2人のアーティストユニットだ。現在はヨーロッパを拠点として活動し、オラファー・エリアソンのスタジオで研究員として働いてもいる。
自然と太陽と光、エネルギーなどが非常に重要なキーワードとなり世界規模で活躍するオラファー・エリアソン。彼の作品を私はこれまで日本でも海外でもいくつか観る機会があったが、その絶対的な作品の強さはたまらない。強い理念に基づいている上に、圧倒的な美しさを放っているのだ。そんな一度観たら忘れられない作品を数多く発表している上に、ソーラー充電が出来るライト("Little Sun" 数種あり)を開発し太陽エネルギーを全世界の人々で共有したいという想いから始まったこのリトルサンが、電気の設備が整っていない地域の子供たちの勉強する手元を照らしたり、最近はスタジオのスタッフみんなで食べているご飯を話題にした料理本も出版("Studio Olafur Eliasson The Kitcken" )したりと、様々な業種から注目されている現代アーティストだ。
そんな世界的アーティストのもとで研鑽を積むSHIMURAbrosの作品は、オラファーっぽいなあという香りがするものもあったものの、映画という切り口からSHIMURAbros独自の世界観へと、確実に羽ばたき始めていた。
今回私が最も魅入ってしまったのは映像作品《Silver Screen》
「意味がわからない」「何が映ってるの?」「現代アート、現代アートだから…わかんないね」
という多くのヒソヒソ声が止まないざわざわした暗い展示室内で、私はただ圧倒され、その凄さにすっかり取り込まれていた。
なんという巧妙な展示だろうか。
使っているのは鏡、カーテン、プロジェクターシステムと椅子、そしてわずかなスモーク。
展示室奥に鏡とカーテンを使いシアターの枠を設定している。そこに映画館のように鏡に正対する後ろの壁からプロジェクターで光を投影しているのだが、鏡に向かって投射しているので当然反射する。その反射を利用し、空間に果てしない奥行きを生み出しているのだ。暗いながらも鑑賞者もかすかに鏡に映り込んでいることがわかる。
もちろん立ったままで作品を右から左からと自由に観ることもできるが、作品の前には4脚だけエレガントな椅子が用意され、そこに座って観るとより一層没入感が増す。
光の形にはいくつかのパターンがあり、20分で1ループだ。美術館展示で一つの作品の前に20分居座るというのは決して短い時間とは言えない感覚かもしれないが、体感としてはあっという間の20分間だった。
私はこの作品に心を打たれた。けれど展示室にいた多くの人たちの否定的な意見の多さに信念が揺らぎそうになり、隣にいた主人を不安な気持ちでちらりと見た。
目が合って、ニヤリとした。
良かった、同じ見解だったらしい。
私たちは展示室を出て、ポーラ美術館の美しい庭園を散策しながら、作品について話し合った。
「この庭にある木のどれかが実は作品だと言われても、俺らは納得する。けどそれは、多分一般的な意見ではない」「俺らの感覚はもう、ああいうものに慣れちゃっているから、それが普通なわけじゃない」
とかなんとか言いながら。
見慣れたことで、楽しめる世界が広がり、幸せも多く見つけられるようになったけれど、それらは例えば周りにいる8割くらいの人たちと共有できないかもしれないということを、常に心に留めなければならないと、なんとなく思った。
それでも自分が心からいいな!と思ったものは、頑張って伝えてみたい。全く伝わらないかもしれないし、それは私の伝える力不足がゆえだったりするのだとは思うけれど、それでも少しはトライしてみたいなと思う。その上で、好きか嫌いか、共感できるか意味不明か、意見が分かれるのはいいと思うし、みんなが簡単に賛同してしまうほうが気味が悪い。「あり」と思う人もいて、「なし」と思う人もいるから、良いのだ。
もしもSHIMURAbrosの作品に興味が湧いて、そして箱根まで行く機会があり、実際に作品を観るチャンスがある方は、しばし何も考えずに、ただ観て欲しい。
「不思議だな」「綺麗だな」そんなことだけをただ感じて欲しい。
ただの光の投影なのに、時に雲海を感じたり、板に押し込まれるような狭さを感じたり、逆に空間の広がりを味わったり。光によって私たちは物質を感じたかのような錯覚を覚え、単なる光だと分かっていながらもその光の線が身体を通り抜ける時に、わずかに身構えてしまう。光は痛くも痒くもないと充分知っているのに。
この感覚は一体なんなのだろう。
作品を通してそれぞれに感じ取る感覚のまま、自分のその心に浮かぶ感覚に向かい合ってみて欲しい。
私は今回、一瞬にして、SHIMURAbrosの世界に巻き込まれた。
何もない美術館の一つの空間に、彼らは突如、その世界を構築したのだ。それも闇と光を使うだけで。素晴らしかった。これからの作品もとても楽しみだ。
この映像作品以外にもこれまでに発表された様々な作品が展示されている。
庭園にも一つ作品があるので
お見逃しなく。
SHIMURAbros "Film Without Film"
↑
"Silver Screen"(2012/2018) (20min. movie)
うわー写真とかじゃやっぱり全く何も伝わらないな😅
Recently in Japan, many events which presented by teamLab or like using the system of Projection Mapping using the light are attracting a large number of people. As they often need huge space and budget, many programs are held with local governments or big companies for the attraction.
But many contemporary artists are joining these project although they are not knew by audiences.
People might say that "I can't understand about contemporary art!", but already they have seen that at the beautiful lightning attractions.
I went to the POLA museum, and I found a wonderful artist SHIMURAbros!
about exhibition↓
http://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20181208ag01/
about
SHIMURAbros↓
http://shimurabros.com/
They are artist unit by Yuka(sister) and Kentaro(brother), and they are working with Olafur Eliasson!! It's a big chance for them studing many things about contemporary art and the art world.
I felt some Olafur-style in SHIMURAbros's works. But they has started in their own feet on their own road now. Their works have the strong body and sophisticated beauty in the same works.
I loved their movie work 《Silver Screen》!
I got involved in this in a moment.
Many audiences kept saying "What is that?" "I can't understand" "Oh, it's contemporary art! I don't know. It's not my friendly!"......
But I couldn't stop seeing their movie.
This works' running time is 20 minutes. It may be a long time for visitors of museum. But the time just flew for me.
I was deeply toutched by this, but at the same time I heared many negative oppinions from audience at the exhibition room. I was disturbed to hear that, and I gingerly saw my husband at my side.
Our eyes met each other. And he grinned with seeing me. I was relieved!
After that, we walked around in the beautiful garden of this museum with talking about art.
It's difficult to tell the fun about contemporary art.
And we recognized our usual experiences about new art works. Almost people may not have any
experiences about it. Our opinions may not the same as the others...
But I will try to tell this excitement feeling about art if I can't explain that properly. It's up to them about "like" or not. Many viewpoints about art should exist in this world because it makes this brilliant world by many kind of arts.
If you want to see SHIMURAbros's works and you can go to POLA museum of art in Hakone, please just feel it with your hole mind.
When I felt this work, I saw the sea of cloud and stood ready for line of light(it's just light!).
What is this feeling?
Please face your heart through their art.
↑
"Trace-Sky-Tokyo Story07"
芸術が深く理解できる、まりさん夫婦は、傍から見ると、羨ましい限りですね(笑)。