原美術館で観たリー・キット展について

心地よい秋の風と優しい日差し。







時折揺れる花瓶にさしたケイトウの花を見ていて

もしかしてこういうとこだったのか、とふと思い出したのは、原美術館で開催中のリー・キット「僕らはもっと繊細だった」展についてでした。

リー・キットさんは1978年香港生まれで、現在は台湾を拠点に活動する現代アーティストです。

今回日本での個展会場として品川にある原美術館が選ばれ、そこで館内全体を使ったインスタレーション展示が開催されています。

窓を通して入りこむ自然光と、作品そのものが発する光のみで、
新たに作品に対して当てている照明はありません。

そのため、その日の天候や観る時間帯によって、見え方が大きく変わることが想定される展示です。

私が観に行った時は晴れた昼間だったため、窓からの光も明るく、ゆったりとした雰囲気に感じられましたが、これを悪天候の雷雨の日なんかに観に行くのも面白そうだなと思ったりもしました。

実はこの展示を観に行ったのは9月だったのですが、消化するのにかなり時間がかかってしまい、もう半ば諦めかけていた頃になって、ふと繋がったのが、家に飾った風に揺れるケイトウだったのです。

なんてことはない光。
なんてことはない風。
大きな意図はなく飾った花や小物。
窓際に何気なく置いたマグカップ。飲みかけのコーヒーが入ったまま、カーテンが風に揺れている。

そういう、日常のふとした瞬間に気づかされる美しいもの。
それらはあまりにもさりげなく、あまりにも密やかで、誰かに伝える前に幻のように消えてしまう美しさです。
それでもたしかにそこに、美があった。
その、指の隙間から漏れ溢れる水のようなものを、多くの人と共有し、共感し、一つの作品として提示するにはどうしたらいいのか。

その問いに対する答えが、今回のリー・キット「僕らはもっと繊細だった」なのでないかと、わたしには思えたのです。

それはあまりにも繊細すぎる出来事。

派手ではないけれど、芯が強く、
見つけた時の幸せな気持ちが、
じわじわと深く心に染み込んでいくもの。


ホワイトキューブの美術館ではきっと不可能だった展示でしょう。
鶏が先か卵が先かのような話になってしまいますが、原美術館だからこその今回の展示は、後々の日常の中に確実に潜り込むようなパワーを秘めていた、「強い」作品展示でした。

美術館内にはお洒落なレストランもあるので、ランチやお茶を楽しみながら、ゆったりと過ごしつつ鑑賞するのにもぴったりな展覧会だったと思います。


原美術館(品川)


http://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/exhibition/243/



原美術館でのリー・キット展の様子の写真はこちら













作品が生み出す光によって、鑑賞者の影が作り出される偶然も。














I went to Lee Kit's solo exhibition titled "We used to be more sensitive" at Hara Museum (Shinagawa, Tokyo, Japan).

http://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/exhibition/243/


When I saw his show, it was September(now already October...). I had to take my time to consider this installation works.
But when I was drinking a cup of coffee at the dining room, I realized the intention in those works by chance.
We find some beautiful things in our life. It is Not special things.
Lee's works told us those daily life and beauty.
The things are so "sensitive". But we know them definitely. It's difficult to say cleary because it's too delicate to catch and send it toward other people.

コメント

とても素敵ですね
光と影の共演ですね

Kyo 2018年10月22日

光もこんな素敵なアートになるんですね

Kyo 2018年10月21日

影が映ると、何か芸術の一部になったような錯覚もあり、のような。。。

みーまる 2018年10月21日

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