名和晃平さんの個展
Biomatrix に行ってきました。
初日、オープニングレセプション。
夕方、もう暗くなりはじめた頃に駆け込みで行ってきたのですが、偶然にも、外の薄暗さと、屋内の照明の度合いが同じくらいで、
涼しい風と共につるりと入り込んだギャラリー内の奥には
《Biomatrix》(2018)
今回の展示タイトルにもなっている作品がありました。彼が2003年から手がけている「LIQUID」のシリーズの新作です。
それはずっとそこにあった、地球の穴を覗き込んでしまったような、不思議と自然な空気を感じる作品だったのです。
この「自然な」という単語には、よくよく考えれば違和感満載の匂いがします。
場所は日本を代表するギャラリーの一つ、スカイザバスハウスの展示室内。
屋外ではありません。
しかも今回わざわざ、作品を高い場所に設置。階段をつくり、その階段を数段登って作品を鑑賞します。
もともとは平らな床のギャラリーで、そこに階段はなく、導線としてはスムーズさを遮る要素ですらあります。
そして使われている素材も、照明の電球、人工的に作られた長方形の形にシリコーンオイル、金属粉、顔料などを混ぜた銅褐色のようにもみえる液体。
これが木だの土だの草だの石ころだの、
自然を強制的にギャラリーの中に持ち込んだものであれば、まあ「自然が」どうたらこうたらという言葉が出てきても仕方ないと思うのですが、
ここにはそれらは一切なく、しかも様々な違和感に繋がるもののオンパレードなはずなのです。
にもかかわらず、私にはなぜか「自然」という単語が浮かんでしまった。
名和晃平さんがセル(cell)をテーマに据えて作品を作り続けていることや、彼のいくつかの有名な作品を知ってはいたものの、
今回初めて、セル、つまり全ての生き物の核となる単位が表現されているというのは、こういうことだったのかと感じることができました。
「LIQUID」の他のシリーズは、私は残念ながら実物をこれまで観たことが無かったので、もしもっと早く、同シリーズの他の作品を見ていれば、今回と同じことをすでに思っていたかもしれません。
機会があればぜひ、このシリーズの作品も観たいです。
さてこの新作《Biomatrix》
泡が出るときに
しゅわっ
という独特の音が出ます。
ぽこ、とか、ボコボコ、とかではなく
しゅわっっ
です。
そして泡が出る速度が上がるに連れて、音も大きくなります。
一見ランダムに泡が出ては消えているかに見えますが、しばらくこの作品を見ているうちに、
ものすごくよく整理された、オーケストラ編成の現代音楽をライブで聴いているような気持ちになりました。
泡が沢山出て、音も大きくなった後、何も起こらない時間が経過します。
それは巨大音楽ホールで、指揮者もオーケストラの楽器演奏者も、そして観客もが、その空間に広がる音と静寂の「間」をひと時も逃すまいと、飲み込まれながらも味わっている時の、独特の緊張感に似ています。
そしてその間が過ぎ、指揮者がわずかに指揮棒を振り、スタッカートでの音をひっそりと再び、オーケストラが奏で始める。
名和さんご自身の意図とは違うかもしれませんが、
私にはこの作品は、楽器と、呼吸、響き、それらが計算され尽くされた美のバランスの中に成り立つ楽曲と演奏に感じられて仕方がないのでした。
スカイザバスハウスさんでの名和晃平さんの個展は今月始まったばかり。12月頭までの開催のようですので、是非お近くまで行かれた方は体感してみてください。ギャラリーなので入場無料ですし、上野、谷根千など魅力あるエリアのすぐ近くですので秋のお散歩がてらにもぴったりです。
アートとか、現代アートなんて特に
ぜんぜんわかんないし、、、と思っている方でも
きっと楽しく面白く観られるのではと思います。
LIQUIDシリーズ以外の作品も。
↑
ダミアン・ジャレさんとのコラボレーション作品です。こちらも新作。
スカイザバスハウス
https://www.scaithebathhouse.com/ja/
名和晃平
http://sandwich-cpca.net/art/index.html
ということで
アート鑑賞
2018年の238件目
10月の8件目でした。
I went to the solo show "Biomatrix" by Kohei Nawa at SCAI THE BATHHOUSE(Tokyo,Japan).
His new work "Biomatrix" is the latest series of "LIQUID" until 2003.
I had not seen this series "moving" and "making sounds" works.
It hit me with a word "Nature".
This work is Not made by wood, grass,flower,soil and any other wild materials directly. But I felt that.
And next, while I watched this "Biomatrix" show for a while, I wondered that it was like an orchestration. It was similar to contemporary music like Toru Takemitsu's works for piano or some Russian composers' works about 1940s.
"Biomatrix"(2018) made some sounds turning big or small. I want to see his another "LIQUID" works.
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独特の世界観を持った作家さんですね。。。