「内藤礼ー明るい地上にはあなたの姿が見える」展@水戸芸術館

内藤礼さんの個展

「内藤礼ー明るい地上にはあなたの姿が見える」展
に行ってきました。

今回の場所は水戸にある
水戸芸術館現代美術ギャラリー。


https://www.arttowermito.or.jp/gallery/gallery02.html?id=501



水戸芸術館は、都内からは決して近いとは言えない場所にもかかわらず、開催個展のアーティストの選択の良さ、展示の面白さから、遠出でも頑張って行きたいと思える美術館です。
ちなみにこれと同じような理由で、わざわざ無理してでも行きたい展示が揃うのが十和田市現代美術館。
ここはちょっとどころではなく、だいぶ頑張らないと行けない場所ですが、それでもなんとかして観に行きたい展示ばかりです。



さて、水戸芸術館での内藤礼さん個展。

内藤礼さんは、これまでにも繊細な作品を数多く生み出してきた現代美術家です。
その作品のあまりの透明感に、観ているこちら側の心までもがどんどん透明な光に満たされ、いろんな澱が洗われるような作品は、何度も、そして何時間でも眺めていたくなるような美しさです。

今回の展覧会は、会場の天井や壁にる窓を存分に活かし、自然光で作品を見せていく構成。
そのため、秋に近づいてきた今月は、開館時間が夏よりも1時間早く閉まります。
夕方、暗くなると、作品と展示の性質上、見えづらくなってしまうからでしょう。

「見えづらく」と書きましたが、今回の展示作品は、一瞬、どこに作品があるのか遠目には分からないようなものもありました。
展示室に入り、最初に対面するのが、テグスとスフレビーズと鈴を使った作品 《母型》。2018の新作です。

透明で小さな吹きガラスで出来たスフレビーズ、細いテグス。作品の入口と出口としての2つだけの小さな鈴。
展示室内の空調と、人が歩くことにより生じるかすかな空気の動きが、作品に時折、ふわりとした揺らぎを与えています。

作品の前で息をするのも躊躇われ、歩く速度も自然とゆっくりになるような、柔らかでありながら緊張感の満ちた空気。圧巻の内藤礼の世界観です。
この作品を一番最初に、展示室入口を塞ぐかのような位置に設置したことで、
観る人は一歩展示室に踏み込んだ時から、一瞬にして外界のざわめきから切断された別世界に入り込みます。

ぐるりと展示を観てから
もう1週観て回りましたが、
やはりこの世界観の入口は、上手い!と唸らせるものでした。


他にも多くの新作が展示され、
水が入った細長いレールに、息を吹きかけること、さざなみが発生する作品《タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください) 》。これは直線のものと、展示室の角に沿うようにしてL字状にカーブしたもの。どちらも2018年の新作です。
展示室の床に穴が開けられていて、レールの支えが埋め込まれています。
設置するために必要な床と接する横バーのようなものは一切無いのです。
床に支柱を差し込むことで、全体を見た時に更に美しく無駄のない、そこに凛とした佇まいも感じられる作品になっています。


ガラス瓶に水が満たされたり、花が活けられている作品、
壁にある窓を活用して小さな窓を作った作品や
鏡の作品、そして

内藤礼さんといえば、やっぱりこれ
《ひと》
今回もあちらこちらに居ましたね。
展覧会告知のイメージにも使われています。



どれも繊細な作品ばかりなのですが、今回の展示の中で一際、その繊細さの極みであると思われたのが
《無題》(2018)

天井から、細い細い白い糸が、1本だけふわりと垂れ下がっているのです。

同じ展示室内の壁には《世界に秘密を送り返す》(2018)という鏡の作品があります。


この《無題》(2018)は、監視員さんの必死の視線の中、そろりそろりと観る作品です。もしかしたら作家の意図とは真逆の空気感が展開されているかもしれませんが、仕方がないかもしれません。
それもそのはず、細い細い糸だけを使ったこの《無題》は同じ展示室内に2本別々にあるのですが、作品は本当に本当に間近まで行き、しかもそこにあると予想しながら近づかないと、わからない。遠くからだと全く見えないのです。
注意して監視していなければ、謝って作品が破損してしまう可能性もあるでしょうし、鑑賞者が引っかかって事故が起きてからでは美術館側の対応が問題視されてしまうのでしょう。展示監視員はさぞや日々緊張の連続であることと思います。

暗闇に目が慣れるのを待つように、この糸を発見した後、部分から目を離さないようにしてじっと見つめていると、この糸もわずかな空気の変化でふわりと斜めに傾きながら展示室内に漂っていることがわかります。
それはまるで重力からも解放されたかのような不思議な浮遊にも見え、時がそこだけピタリと止まったようにも感じられます。まさに静謐の極みです。
大切な何かは、ガサガサしたやかましさの中では決っして見つけることのできない、とても壊れやすい空気の中にある。そんなことも考えさせられました。




私が内藤礼さんの作品を初めて観たのは
鶴岡八幡宮の境内にある神奈川県立近代美術館(現在閉館中)でした。その時は、たまたま人の少ない日だったのかもしれませんが、鑑賞者がほとんど居なくて、静かな中、内藤礼さんの世界と出会いました。
そして今年、内藤礼さんの作品が観たいと水戸芸術館に訪れる人は、確実にあの頃よりも増えているのだと実感しました。

その繊細過ぎる作品の性質ゆえ、ヴェネツィア・ビエンナーレで内藤礼作品が展示された時、一度に一人ずつしか作品の中に入れないような展示方法にして、物議を醸したというのを本で読んだことがあります。
それは内藤さんにとっては、作品を観たい人が長蛇の列になったとしても譲れないことだったのでしょう。
その意味が、何度も内藤さんの作品を観ているうちに、今回少し体感できたような気がしました。
今年の夏は瀬戸内海の豊島美術館は大混雑でとても辛い鑑賞だったという感想もちらほら聞こえてきて(猛暑でもありましたしね)、益々内藤礼作品を観たい人が増え、人気が高まっている様子。
もしもいつか機会があるならば、内藤さんご自身に、世界的現代アーティストとなり、年を追うごとに多くの人が彼女の作品を観たいと切に思うようになっている今、彼女の作品の特長である大切な要素と、鑑賞者と作品との環境、折り合いの難しさ、様々な形式の作品の見せ方の難しさなどについて、彼女自身はどう感じているのかなどを伺ってみたいなと思いました。

これには絶対的な正解はないと思います。もちろん、作家本人が言うことが正解の一つであるのは間違いないのですが、作家が伝えたいことと、場所やその他の条件の都合で可能不可能が出てくること、妥協せざるを得ないこと、許容範囲で器用に乗り切れてしまう人、それができない人、それでもアーティストとして妥協してはいけない点があることなど、
展示というのは常に複雑な問題を大なり小なり抱えているのだということ。
知覚されることが価値の一部を担う「表現」という世界では、もしも誰にも観てもらえなければ、存在しないと同じであるとも切り捨てられかねません。
難しい問題は多いですね。


と、様々なことを考えつつも、とにもかくにも
内藤礼さんの個展を今回観ることができて本当に良かったし、知り合いに「どこかオススメの展示は最近あった?」と聞かれれば、間違いなく水戸芸術館の内藤礼展を挙げると思います。


今回の個展は、彼女にしか創り上げることのできない、素晴らしい個展です。
そしてその美しさ、静謐さは、会場に行って体感しなければ決して味わう事はできません。


内藤礼さんの作品は、個展を重ねるたびに、精密さと繊細さに更に磨きがかかり、どんどん透明になっていくように感じます。
それは物質として見えづらいとか、透明な物質を使っているとか、そういうことではなく、
目には簡単には見えないけれど確かにそこに存在している、とても大切なものを、内藤さんは全身全霊で伝えてくれているような気がするのです。
作品は、私たち鑑賞者と内藤さんとの間を繋ぐ共通言語としての「物質」であり、媒介者です。

内藤さんの作品はこれからもどんどん透明になり、どんどん空気に近づいて、
もしかしたらこの先、何もない場所に立っただけで「あ、内藤礼」と認識できるような作品になるのではないかという予感さえ覚えました。
目には見えないけれど、内藤礼作品を知覚できる、そんな作品。今回私は、そんな状態に極めて近いものを観たように感じました。



内藤さんの作品は、観る人それぞれの心と向き合う時間をプレゼントしてくれる作品だと思います。
展示に行かれる方はぜひ、ゆっくりと作品の中に浸って、贅沢な時間を堪能してみてください。



展示室は看板も含めて全て撮影不可でしたので、
記念の1枚はこちら

水戸芸術館といえば、やっぱりこれでしょう。

礒崎新さんの建築による水戸芸術館。
礒崎さんが作る美術館には、独特の力強さ、記憶に残るインパクトがあり、展示企画を考える側とのコラボレーションで無限に面白さが広がる建物なのかなあと、先日のハラミュージアムアークでも観ていて思いました。



というわけで
観に行った全ての展示についてここに書いているわけではないので、トータルの数がブログ上では飛び飛びになっていますが、
アート鑑賞
2018年の199件目、
9月の36件目でした。


I went to the Rei Naito's solo exhibition at Art Tower Mito.
I love her works. This exhibition is my third time to see her solo exhibition at museum.
Her sensitive works are improved and become clear and silent monuments in every exhibitions for a few years.
In this show, as some of her works were too delicate to hard seeing them, some museum guard staff must watch with their greatest care.
At the start of this exhibition, she presented her new work using very little glass balls, little bells and lines. I was caught in her world in a twinkling by this first work.
This exhibition was very great show with my recomendation! Please feel her world at Mito.
I'm sure you will get the calm mind.

As I couldn't take any photo in this exhibition, I took the architect of this museum by Arata Isozaki👍✨
It's a famouse monument of this art complex area.








コメント

素敵なモニュメントですね

Kyo 2018年09月27日

ずいぶん足伸ばして、美術館巡りをしているんですね。

taka 2018年09月25日

なかなか深いですねー、今日のブログは(笑)。そして、確かに、芸術は、作者が意図した以外にも、見る人それぞれの解釈もありますよね。。。また、青森も、何かをきっかけに訪れることが出来るといいですね。

みーまる 2018年09月24日

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