ジム・ダインやオールドリッチ

さてまたも
展示の話を書き溜めてしまったので
そろそろまとめても書いておきます。

横浜美術館での「モネ それからの100年」の帰りに
偶然2つの展示を観ることができました。

みなとみらい駅に直結したギャラリースペース「サブウェイギャラリーM」というところでは
陳亮さんの写真展”No Words”が開催中。




写真家である陳亮さんと、舞台演出家である松尾祐樹さんによる展示でした。
駅の中(改札の外です)にこんな場所があったなんて知りませんでした😮


続いて、みなとみらいエリアにある
富士ゼロックス・アートスペースにて
「ジム・ダイン展」
ここは撮影不可でしたが、ここに来たのも初めて。富士ゼロックスさんが複製画の観点から素晴らしいコレクションをお持ちであることは、さまざまな版画展、現代アートの展示などを通して知っていたのですが、
みなとみらいにギャラリーがあったんですね😍✨


今回の展示は現代アーティスト、ジム・ダインの《私の体の30の骨格》(1972. ドライポイント.紙.30点組)
というポートフォリオ形式の版画作品です。

ジム・ダインは1935年にアメリカで生まれたアーティスト。これまでに絵画作品、版画作品、立体作品とさまざまな形の作品を生み出して来ましたが、彼自身は「画家(painter)である」という点に強いこだわりがあるようです。
つまり今回展示されている版画作品も、彼の有名なハートやピノキオなどの立体作品も、彼の中では絵画作品とは違った位置付けなのかもしれません。
それでも版画作品はこれまでになんと1000点以上も制作されており、オハイオ大学では版画を学んでいたりと、版画には縁が深いようです。

縁が深いという点からは彼は工具とも繋がりがあります。実家が金物屋でたくさんの工具を扱っていたのです。今回の一連の版画作品は、様々な工具が1点ずつ描かれていて、それらは全て、ほぼ実物大に表現されています。人毛のように見える細かい線で覆われた工具が《わたしの体の30の骨格》を形作り、工具そのものが自分自身となっているわけです。

今回のジム・ダインの作品展では
単なる工具の描写と細かい無数の線による銅版画が30枚続きますが、
2枚、3枚と見続けていくうちに、
ある時突然、背筋がゾクッとするような生々しさを感じるようになり、
軽いめまいを覚えるほどの、拒絶にさえも似た空気を作品に感じ、
画面は、強烈な印象を投げつけてきました。
長い時間見つめ続けられないような、暴挙を感じたのです。

これはあくまでも個人的な感想で、観る人によって違った気持ちになるのではないかと思いますが、
様々な作品を観ていて思うのは
作家本人の体温に触れたと思うような作品は、強く印象に残りやすい、ということです。
それは時に、表象として派手なもの、話題性のあるものよりも、長く深く記憶に留まります。

今後、どこかで
ジム・ダインの絵画や立体も、まとめて観る機会があればいいなあと思いました。

図版で観るのと、実物を目の前にするのでは
圧倒的な情報量の差があり、図版は観ているようで観ていない部分があまりにも多すぎてしまうのだなあと、今回も思ったのでした。





さて場所は変わって今度は銀座。

GINZA SIXでは蔦屋書店内のスペースと、THE CLUBというギャラリースペースにて2つの展示を観ることができました。

蔦屋書店内の中央にあるスペース GINZA ATRIUMでは

三宅信太郎「果てしない夜景」展


三宅信太郎さんの作品はこれまでに
小山登美夫ギャラリーさんで何度か観てきたのですが、
今回の展示はとても自由な雰囲気。
のびのびとした作風がさらに発揮された印象を受けました。
箱型の作品も面白く
積み上げられたビルのようなものも、ばらばらに一つ一つ販売可能な状況になっています。
ぬいぐるみを使った作品もあったりと
遊び心満載です。








THE CLUBでは
国際的に活躍するキュレーターのアマンダ・シュミットさんによるグループ展 Defacement



参加作家は

ルーカス・エイジュミアン
リチャード・オールドリッチ
マリア・アイヒホルン
ニコラス・グアニーニ
スーザン・ハウ
ブルック・スー
ジャクリーン・デ・ヨング
レイ・レーダレ
RH キートマン
ゲルハルト・リヒター
ベティ・トンプキンズ
アンディ・ウォーホル

という12人。


破壊というキーワードから連なる
新たな価値や、変化、問いかけなどを追う展覧会。

それぞれの作家によるDefacementです。

ジャクリーン・デ・ヨングによる
"The Shredded Fake-simile"という作品(手前の立体)





2018年の新作です。






かつて編集を務めていた書籍が、第三者によって無許可で複製されていたことから生まれた作品。
実際に無許可で出された書籍をシュレッダーにかけ、透明な箱に入れています。


一番好きだったのは
リチャード・オールドリッチの
"Untitle(Mirror)" 《無題(鏡)》
という作品。







塗り潰された絵画は、絵画として成立するのか、という問いかけの作品だそうで、
塗りつぶすことで、何かが隠されているということのようですが、
説明云々の前に、何とも言えない圧倒的な存在感と、格好良さに、グサッと目が釘付けになりました。

サイズは48.5×32.7cmなので、小さめの作品なのですが、そのサイズだけを聞いた時に想像するような存在感をはるかに超えた力強さがあります。
小さいのに濃密で大きな作品です。
絶妙な質感、塗り込めの雰囲気などは
写真では伝わりきらないなあ。気になる方は是非実物でご確認ください。2012年の作品です。



と、そんなこんなで 長くなりましたが
いろいろと観に行ったものたち、でした。


アート鑑賞
2018年の152件目、153件目、155件目、156件目
8月の5件目、6件目、8件目、9件目でした。


I went to some contemporary artists' exhibitions.

Jim Dine's drypoint works exhibition had vivid power. On these "Thirty Bones of My Body"(1972), he expressed himself drawing some tools which were his familiar matters until his childhood because his father and his grandfather ran the tool shop for their living.When my first sight, I didn't realize some odd feeling. But when I saw 2 or 3 works, I felt something strange fear in these images. I realized vivid and got shivers down my spine from these works.
He is a painter. It is his argument by himself. But these prints were important works I felt. I want to see his another works.

And I went to GINZ SIX to see 2 exhibitions.

At THE CLUB in this building, I saw a group show "Defacement" curated by Amanda Schmitt.
On this show, she represented 12 artists.
I loved “Untitled(Mirror)” by Richard Aldrich. It’s not big size, but very strong and elegant work.
A picture taken by me on this mobile phone couldn't tell you this great power. Please see it in this gallery to feel this allure.

コメント

同じ作者でも、ひとつひとつの作品の出来や、背景が異なるので、見ごたえがありますよね。また、さすがに、これまでの経験が上手に積み重なり、文章での美術の表現が洗練されているように思います。これからも、趣味と実益を兼ね、また優れた芸術家の奥さんとして頑張って下さいね。

みーまる 2018年09月01日

おはようございます
9月入りまして、芸術の秋、読書の秋、そして食欲の秋。この季節も楽しいことが満載ですね

Kyo 2018年09月01日

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