最近読んでいた本は、
三島由紀夫の「音楽」「小説読本」「豊饒の海」です。
なかでも豊饒の海は〈春の海〉〈奔馬〉〈暁の寺〉〈天人五衰〉からなる4部作品です。
輪廻転生からなるこの壮大な物語。
この作品の解釈として私が思うのは、それぞれの作品のなかに清顕、勲、月光姫、透という主人公の人格と思想を描き、若く美しい人生のなかで人間の欲という欺瞞を炙り出し、生を刹那的に描いている。さらに勲・月光姫・透は清顕の生まれ変わりであると信じた元裁判官の本多を軸に物語が進んでゆく。
これまで彼らの夭折を見てきた本多という男は「見る」ことに長けていた。あらゆる美醜を見すぎて、ついには自分とよく似た性質をもつ青年の透をみつける。
人間の狡猾さを描き、思想という泥沼に溺れる危うさを描き、肉をもつということ、血が流れるということ、俗世のなかにあるしがらみを描いています。
そしてラストは、涅槃の世界。そこには静かなる〈無〉の世界が息づき、あるのは俗世から切り離された悟りの世界のみでした。
読了後の感動は、私をしばらく静寂の世界へ誘ってくれました。すべては自分自身が物事を難しくこしらえ、しがらみを作り、呪縛されているにすぎないのでしょう。どんなに美しくともすべては水のように形を変え、流れてゆく。
ラストの解釈ですが、私が思う忘却という意味はふたつあると思います。
ひとつはただ忘れ去ること。
もうひとつは、忘れてはいないけれど蓋をすること。
聡子は、御門跡として本多の問いに応えたのでしょう。透き通る清らかな心に、さざなみひとつ立てず、本多の言葉に耳を傾けておられた。
壮大な仏教世界を小説に落とし込んだまさに豊饒な作品でした。
素晴らしい大作!!
#小説
#三島由紀夫
#豊饒の海
#読書
読書家ですね。私は、この頃は、GWにどこかに行きたいと思って、ガイドブックばかり読んでいました。。。しかし、残念なことに仕事が入り、どこも行けそうにありません。グッスン。