「驚異の超絶技巧!」展@三井記念美術館

三井記念美術館で現代アートが観られる!しかも明治工芸と一緒に?!

なんだそれは?!

とすごく興味をそそられた展覧会

「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」展

行ってきました。


これは、かなり面白い展示です。
ツボとか箱とか昔の工芸品を見てもよくわかんないし、と思っている人も、現代アートぜんっぜんワケわかんないし、と思っている人も
しっかり楽しめる展覧会だと思います。

それはなぜか。

まず1つ目に
タイトルにもあるように、
とにかくその細かい技法に圧倒されるんです。

無理に理解しようとしたりしなくても
ただ素直に、その技の凄さに感嘆するだけでも
大満足できる質と展示品のボリューム。


そして2つ目に
現代アートの楽しみ方が広がります。

木を使った彫刻、象牙の彫刻、
陶器などの焼き物、様々な七宝、
刺繍による作品、
などの技術を使って作り上げた現代アートが
それらの技術の元祖ともいえる昔の工芸品と同時に並べられていることによって、
昔々から伝統的に行われてきた日本の工芸の技術を、
現代の作家たちがどう捉えて、発展させて自分の作品を作ろうとしているのか、見えてくるので
現代アートだけを見ているよりも、脈々と受け継がれた系譜を感じられ、現代アートをすんなりと受け止めてやすくなるのでは、と思います。

そして逆に明治の工芸品に再び目を移すと、
なんだかそちらにも、現代アートのようなチャレンジ精神を感じる面が見えてきたりもします。


絵画は楽しめるけど、立体の作品はわからーん!と苦手意識があった方にもおススメしたい展覧会。ぜひ。

と、あまりにステキな構成の展覧会だったので
すでに全体を押してまとめみたいになってしまいましたが、
いやいや、ちゃんと細かく書きますよ。


私は今回この展覧会ではお目当てが完全に現代アートだったこともあり、お気に入り作品は現代アートに偏ってしまいました。
(もちろん伝統的な工芸品でも素晴らしいものがたくんあるので、展覧会に行く機会がある方はぜひじっくりご堪能下さい)


では、、、


まずは

春田幸彦さん。

今回は

《有線七宝錦蛇革鞄置物「反逆》(個人蔵)

《盛上七宝鰐革財布置物「無駄死に、無駄口、無駄遣い」》(個人蔵)

《有線七宝錦蛇革財布置物「無駄死に、無駄口、無駄遣い」》(個人蔵)


以上の3点が展示されています。

明治に並河靖之らによって完成された有線七宝などの技術を使って作り上げられた現代アート。
七宝を立体の造形として使うということを重視した作家さんです。
従来の七宝の概念を覆す作風と言われています。

見れば、確かに。
そして言われなければ七宝だと気がつかないような、細かい造形です。
それぞれ錦蛇の革のハンドバッグ、お財布が七宝で作り出されています。

少年の頃からロック歌手、忌野清志郎さんが好きでよく聴いていたという春田幸彦さんは、
諧謔的な社会風刺をアートを通して、そして新しい七宝を使って、発信しています。

とにかくその作品から出てくる鋭利なパワーがすごい。超絶技巧がどうのこうのというよりも、
決して大型の作品ではなく、むしろ普通のハンドバッグやお財布と似たような大きさなので小さめのサイズなのに、観ているこちらに向かって、作品全体が襲いかかってくるかのような、そんな強さを感じます。


ちなみに今回、並河靖之作の七宝も同時に多数展示されていますので、合わせて観て行くのも面白いです。







そして次は



前原冬樹さんの作品。

今回は4点の展示がありましたが
中でも

《一刻 : 皿に秋刀魚》(個人蔵)

驚かされます。

お皿と、食べかけの秋刀魚が「一刻」なので一つの木から彫り出されています。

皿と秋刀魚の間には空間があり、秋刀魚の身がなくなって骨が出ている部分、そしてその裏面、
展示を観ている私たちが、しゃがみこんでも見えないような部分まで、綺麗に彫られ、彩色まで施されています。

前原さんはなんと、もともとはプロボクサーで
そのあとサラリーマンで、
そこから32歳で東京藝術大学に入学、油彩画を専攻し、首席で卒業。
その後、独学で彫刻を始め現在に至るという
なんだか経歴だけみると、わけのわからない面白さがあるプロフィールなんです。これだけでも興味をそそられます。一体何者なんだ!と。凄すぎます。

前原さんの彫刻には丁寧に油彩が施されていて、
木彫と相まって、まるで日本画を立体的にして観ているかのようです。

実にエレガント。実に美しい。

彫刻に使う道具も自作されているものもあるとか。

制作している様子を、みてみたいです。
すごい集中力なんだろうなあ。






さてさて次、


佐野藍さんの作品。
今回2点展示されていましたが
《ピンクドラゴン》(個人蔵)
がとても可愛らしくて魅力を放っていました。
なんと佐野さんは2016年に東京藝術大学大学院の彫刻専攻を修了したばかり!
こらからさらに、どんな作品が生まれていくのか、楽しみです。



というわけで3人の現代アーティストの作品に絞って紹介してみましたが

刺繍の青山悟さんや
スーパーリアリズムのような墨の絵画の山口英紀さんなど、
最近ほかの展覧会でも観ていいなあと思っていた作家さんが、今回の会場にも展示されていたり

明治工芸の名称、技術を知ることができたり。

「自在」という、江戸時代中期頃に明珍派の甲冑師の余技として生まれた、くねくねとあちこちが自在に動く工芸のジャンルがあることや

刺繍による屏風絵はたくさん存在していたものの
虫食いなどの痛みがあって保存管理も難しく、
海外に渡ったものも多く、
なかなか日本で展示を見る機会がなかったけれど、昔は人気で海外に高価な値段で取引される売れ筋商品だったことなど

いろんな工芸のいろんな面を見て、知ることもできました。

12月の頭までの開催なので
ぜひ!




三井記念美術館

http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/




というわけで


アート鑑賞
2017年の69件目
10月の15件目
でした。


余談。
三井記念美術館は
エントランスもエレベーターも展示室内の建物のつくりも、とってもオシャレです💕
ステキな雰囲気に包まれます✨









コメント

面白そうな企画ですね。。。

ま-みる 2017年10月31日

工芸品とアートの境界線って、あるんでしょうかね?
私には判りません😅

昔のものだけではなく、若い職人さんの作品でも「これはアートだなー」と思うものもありますよね。

taka 2017年10月31日

とても楽しそうな展覧会ですね
日本人は手先が器用だからこういう技法ができるんですね

Kyo 2017年10月31日

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