「怖い絵」展内覧会その2@上野の森美術館

さて上野の森美術館で本日より開催の「怖い絵」展内覧会のお話の続き・・・



その1では
目玉作品や、これまで資料でしか知らなかった作品の実物を目の当たりにできた幸せを書いてきましたが、
ここからはいつものように、完全に個人的趣味として気になったものをピックアップしていきたいと思います。

いつもはこのコーナー、2点3点に無理やり絞り込んでお届けしておりますが
今回はせっかく写真もあるので写真が載せられる6枚分まで行ってみたいと思います(それでも絞り込みなんたけどね)。



まずはこちら







《サウルとエンドルの魔女》
ベンジャミン・ウエスト作
(1777年製作/カンヴァスに油彩/ワーズワース・アテネウム美術館所蔵)





白いローブをすっぽりかぶった人は
エンドルの魔女が呼び出した亡霊。
その下で床に倒れ混んでいるのは、すでに神からも見放され戦いに敗れ死ぬ運命だと亡霊から告げられたサウル。

絵の中心にいるこの二人は顔が全く見えないにもかかわらず、ものすごい恐怖感を醸し出しています。
それを引き立てているのは、恐れのあまり飛び退くようにして顔をひきつられている周りの人物たち。

亡霊が白いあたりが、ちょっと現代の映画の表現のようにも感じられ、これが1777年に描かれた時は、今の私たちが受け止める感じ方とは違った恐怖の味わい方だったかもな、なんて想像もしながら観ていました。
なんだかわからないけれど、どうにも心に引っかかった印象的な作品でした。



大画面ではないにもかかわらず、インパクトはかなり大という意味では《サウルとエンドルの魔女》以外でもこちら







写真の向かって左は
《メデューズ号の筏(テオドール・ジェリコー作品の模写)》
ジャック=エドゥアール・ジャビオ作
(1854年製作/カンヴァスに油彩/ボルドー美術館所蔵)

なのですが今回挙げたいのは右側です。
右は
《死せるナポレオン》
オラース・ヴェルネ作
(19世紀製作/カンヴァスに油彩/ファーブル美術館所蔵)


かなり小さめの作品だとイメージしていただけましたでしょうか。

ナポレオンといえば
勇猛果敢、絵ではかなりのイケメンとして描かれた、向かうところ敵なしのような作品ばかりが思い起こされますが、この《死せるナポレオン》は、晩年のナポレオンがセント・ヘレナ島に流され、最後はとても痩せてひっそりと亡くなったという、その様子が描かれたものです。

実はこの作品がある右側の壁には最初に紹介した
超巨大な目玉作品《レディ・ジェーン・グレイの処刑》が壁一面を使ってどーんと飾られているのですが、
その迫力にも負けないくらい、
画面サイズはかなり小さいのに、一際インパクト大!と感じた作品でした。







続いてこちら






《殺人》
ポール・セザンヌ作
(1867年頃/カンヴァスに油彩/ウォーカー・アート・ギャラリー、リバプール国立美術館所蔵)




ヨーロッパ絵画の鑑賞が好きな方なら、
ポール・セザンヌの名前を聞いたことがあるかなと思いますが、ポール・セザンヌの作品としてイメージされるのはもっと、穏やかなものばかり。リンゴをテーブルに並べた静物画はとても有名ですし、セザンヌが愛した自然や、何度も描いたサント・ヴィクトワール山の風景画などを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

あのセザンヌが描いた、この作品。
農民でしょうか。腕の力強さ、服装、なにかのちょっとした小競り合いからの勢いとは違う、深い暗闇に引きずり込まれそうな積年の強い怒りのようなものまでも感じてしまいます。
セザンヌってこんな、全く違う雰囲気の作品も描いたんだな、というショッキングさでした。そう感じた方も多かったのか絵の前でしばらく立ち止まって観ている方が多かったように思います。






続いてはこちら




こちらは展覧会会場に入って最初の展示室。
写真向かって右側が
《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作
(1891年製作/カンヴァスに油彩/オールダム美術館所蔵)

向かって左側が
《オイディプスの死》
ヘンリー・フューズリ作
(1783-84年製作/カンヴァスに油彩/ウォーカー・アート・ギャラリー、リバプール国立美術館所蔵)




つまり展覧会全体の一番最初に展示されている作品が左の《オイディプスの死》なのですが、
なにしろその隣の、導線的には正面に当たる壁には《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》、そしてそのすぐ右側にはハーバート・ジェイムズ・ドレイパー作の《オデュッセウスとセイレーン》という、これまた美しく素晴らしい作品が2点も並んでいるものですから、一番最初の作品《オイディプスの死》の前はみなさんなんとなく足早に…。


わたしも最初、さらっと観ていたのですが、展示を最後まで見終えたときに、「いやいやまてまて、あの最初の作品がなんだか気になる」と思い直してもう一度観に行ったのでした。


よくよく改めて観ていけば
《夢魔》と同じ画家、ヘンリー・フューズリの作品。
ついでに言えば展覧会半ばでももう一点、
こちら





《ミズガルズの大蛇を殴ろうとするトール》
ヘンリー・フューズリ作
(1970年製作/カンヴァスに油彩/ロイヤル・アカデミー所蔵)


これも気になっていて
やっぱりフューズリ。


どのフューズリ作品も眼光がすごいんです。
もう目から、凄まじい光線でも出ているんじゃないかという程。
特に《夢魔》や《オイディプスの死》の赤い目の光には、射すくめられてしまいます。
絵の背景や物語なども恐怖にあふれていますが、何よりも絵そのものの強烈さがすごくて、家に飾っていたら絶対に夜中に絵の前を通りたくないっていう凄味があります。
《ミズガルズの大蛇を殴ろうとするトール》は眼球が見えないような構図で描かれていますが、その視線の強さは他の2作品と同様。

なんだか今回はフューズリ作品がとても気になった展覧会でした。








そろそろ写真の掲載可能な枚数制限が・・・



ということでこの辺りでおしまいにいたします。
本当にいいなあと思ったものを挙げつづけたらきりがない程に、どれもこれも素晴らしい作品ばかりでした。


音声ガイドも借りましたよ✨
ナビゲーターは女優の吉田羊さん。
解説に特別監修の中野京子さん。
中野さんがなぜ「怖い絵」の本を書くことになったのか、絵画鑑賞に対する想いもご自身の言葉で語ってくださっていて、中野さんの本を全巻読破したくなりました。怖い絵のシリーズもまだ全部読めていないので。

知ればさらに楽しめる絵画鑑賞。
展示室には中野さんの解説もたくさん掲示されているので、そのあたりも読みながら、じっくり鑑賞していただくと、普段よりももっともっと、アート鑑賞が面白くなることと思います。




上野の森美術館で本日から開催の
「怖い絵」展
12月17日までです。
詳しい時間やアクセスなどは公式サイトでご確認下さい。

上野の森美術館公式サイト
http://www.ueno-mori.org/



怖い絵展公式サイト
http://www.kowaie.com




アート観賞
2017年の58件目
10月の4件目でした🖼

実は今月はこの前にいくつか既に展示を観ておりまして😅10月の件数がいきなり4ですが😅
まだアップできていないので
この後追い追い書いていきます✨






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コメント

この絵も素敵ですね

Kyo 2017年10月08日

今回のブログの絵からのショックが大きかったので、今晩は眠らずに起きていようと思います、、、なんて(^0^)。

ま-みる 2017年10月07日

素敵な絵ばかりですね

Kyo 2017年10月07日

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