山種美術館での企画展「上村松園ー美人画の精華ー」展、特別内覧会のお話、つづきです。
今回は、展示の前半では上村松園の作品18点をたっぷりと堪能し、後半は「美人画」を描いた他の日本画家の作品も紹介する構成。
その中で私が最も衝撃を受けたのが
橋本明治という画家の作品。今回は3点展示されています。
橋本明治(はしもとめいじ)は法隆寺金堂壁画の模写も担当した方なのですが
あれこれ説明するよりも、一目瞭然な、非常に特徴的な作風です。
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《月庭》(橋本明治 / 山種美術館所蔵)
キャンバスに油絵のような強い、目の前に立体的に迫るような勢いも感じられる大型の作品ですが、実際は油絵ではなく、紙本・彩色の日本画です。
月夜を表現したこの作品には、月そのものは描きこまれてはおらず、色と光の描き方のみで月が出た夜を表現しています。
なによりもこの強い色使いと、独特の黒い輪郭線。
まるでヨーロッパのクロワゾニスムの作家たち、エミール・ベルナールやモーリス・ドニ、ポール・ゴーギャンの輪郭線のようにも見えてきます。私が、キャンバスに油絵の具というキーワードを思いついたのも、きっとクロワゾニスムの作風と頭の中でリンクしたからだと思います。
橋本明治の輪郭線はその強弱のリズムも素晴らしく、
独特の色使いと相まって、観ている人に強い印象を残します。
展覧会の後半に展示されている作品なのですが、そこまで観てきた素晴らしい作品の数々の印象が、一気にぶっ飛んでしまうくらいの衝撃を受けました。
すごい。かっこいい。
他の2点も素晴らしく
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《舞》(橋本明治 / 山種美術館所蔵)
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《秋意》(橋本明治 / 山種美術館所蔵)
品のない強烈さではなく、
エレガントなのに強い。
一見相反するような要素が、画面の隅々まで巧妙なバランスを保ち、光を放っています。
それぞれ
《月庭》は1959年、橋本が55歳の時の作品
《舞》は1966年、橋本が62歳の時の作品
《秋意》は1976年、橋本が72歳の時の作品
いま観ていても、現代アートのような新鮮さも感じてしまいます。
橋本明治、好きな画家がまた一人増えました。
さて橋本明治以外での後半、私のお気に入り作品はこちら
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《清姫》のうち「寝所」(小林古径 / 山種美術館所蔵)
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《清姫》のうち「清姫」(小林古径 / 山種美術館所蔵)
これらの作品は小林古径がずっと自身の手元に置いてあったもので、美術館の初代館長である山﨑種二が、美術館を作るということで、その際に売ってもらった作品だとか。
小林古径は、絵巻物のようにする意図もあったようで、そのためか画面も横長。ストーリー描写に溢れる、いかにも絵巻物の一部を思わせるような作品です。
清姫の物語は道成寺の鐘といえば、思い当たる方も多いかもしれません。能や歌舞伎などの様々な舞台作品にもなっていて、最後に大蛇に変身してしまった清姫が、大きな鐘に隠れた僧侶・安珍を鐘ごと焼き殺してしまうという、なんとも壮絶なお話。鐘の出てくるシーンが演者、舞台の見せ場ともなっていますね。
とても怖いお話だし、《清姫》のうち「清姫」に描かれたシーンなどは、怒り狂った清姫がまさに大蛇に変身する直前の様子なわけで、とても飾りたくなるようなものではないはずなのに、ずっと眺めていたくなるような美しさを感じてしまいます。
小林古径がずっと売らずに手元に置いておいたというのも、なんだか納得の素晴らしさです。
最後にもう1点
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《虫売り》(伊藤小坡 / 山種美術館所蔵)
「虫売り」をテーマとしていくつかの作品を残している作家だそうで伊藤の得意とする題材だったようです。
虫売りの女性は表情は見えませんが、なんとも優しく艶っぽく、美しい佇まい。
お天気の良い日に、虫たちの声がリンリンと響く様子が、とても上品に描かれていて素敵な作品でした。
ということで
ここに載せられる写真が1記事につき6枚なので
この辺りで写真はおしまいにしておきます。
今回ももちろん、音声ガイドも借りました!
ナレーターは安井邦彦さん。
もう何度聴いても完璧で、最高の音声ガイドなんです。品のある喋り、聴きやすい声、しっかりと脳みそに届くわかりやすい解説の話し方。どれをとっても素晴らしすぎて、メロメロです。展示にいらした方は、ぜひガイド機を借りてみてください。
山種美術館での「上村松園ー美人画の精華ー」展は始まったばかり。
詳細は公式サイトをご参照ください。
http://www.yamatane-museum.jp/
アート観賞
2017年の47件目
8月の4件目
でした🖼
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確かに、小林古径の作品は素敵ですよね。また、ちょっとしたところで、思わぬ名作に出会うと、大きな感動が得られますよね。。。