夜だけが知る絶景はここにもある。
東京の夜景の名所は多々あるが、皇居のお堀に写し出される夜景は一際美しい。
私はそれをまぼろしの都市と呼ぶ。
水面に写るのはまるで同じ街並みなのに、そこには一定の静寂が満ち、波打つ水面にはろうそくにも似たビルの光が淡くゆらめく。
まぼろしの都市はずっと昔からここに在り続けているかのように悠揚と構えている。
誰にも触れられない厳重なお堀に存在し、ろうそくの炎のように何かが消さないかぎり永遠に水面に灯りつづける。まるで意志を持ったまま、運命を委ねているかのように。
空が白み始めるとき、まぼろしの都市は静かに眠りにつく。水をたたえたまま息をひそめる。
そして夜がふたたび支配するときに悠然と姿を表すのだ。誰にも触れられない品格を保ちながら。
以前は私は夜の仕事でして
暗くなると現れ、夜明けと共に居なくなる。
カラス、とも言われてました。笑