小川洋子さんの小説
「人質の朗読会」(中央公論新社)
読み終えました。
小川洋子さんの小説は有名な作品も多いのですが
まだたくさんは読んでいないんですよね。
本って不思議なもので
手にとって
読もうって思ってても
あ、この本はいまじゃないかも
となることがあって。
出会いというか。タイミングというか。
いいなあって思った時に読み始めないとっていうのが本なんだなあっていう気がしています。
物だし、すでに世に出版されているものだから
いつでも読めそうなものなんですけれどね。ふしぎふしぎ。
さて
この本は
「地球の裏側にある、一度聞いただけではとても発音できそうにない込み入った名前の村」で発生した日本人人質立て籠り事件のお話。
といっても
犯人との緊迫した駆け引き、息を飲む突撃の様子などが克明に、ということではなく
人質となった人たちが
ひとり、ひとつの話を、室内のどこかに書き残して
それを順番に朗読していったという事実が
事件後、浮かび上がり、
その録音と、残されたものから紡ぎ出される8種類と1つの短編。
8人の人質と、特殊部隊通信班としてその朗読を聞いていた1人が後に語った物語です。
「杖」
「やまびこビスケット」
「B談話室」
「冬眠中後にヤマネ」
「コンソメスープ名人」
「槍投げの青年」
「死んだおばあさん」
「花束」
そして
「ハキリアリ」
どれも色鮮やかに、そして少し不思議な感じもあったり、
一見ドラマチックだったりするものばかりなのですが、
なぜだかとても静かに静かに語られていきます。
その静けさが読んでいて心地よい。
安っぽい感動、手軽な盛り上がりもなく、
ただ、淡々としているのに
すごく強く心に残ります。
静かなのにインパクト大。
さすが、かなり前の作品といえども
人気作品のひとつなだけはありますね。
表紙に採用されている彫刻の現代アートは
日本の仏像の修復なども芸大大学院でがっちり学ばれてから創作活動をされている土屋仁応さんの作品。
まだ実物をみたことがないのだけれど、写真でみているだけでもすごく魅力的で、好きな作家さんです。
さてそんなわけで
2017年の6冊目
1月の6冊目でした。
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本との出会いは、そんなところが確かにありますね。また、人との出会いは、、、。そして、これからも良い本に巡り逢えるといいですね。