世界的写真家
セバスチャン・サルガドの自伝
『わたしの土地から大地へ』(河出書房新社)
セバスチャン・サルガドの言葉で
イザベル・フランクさんがインタビューをしながら書いたものを
中野勉さんが日本語訳された本です。
以前、映画『セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター』は観ていたので
サルガドの人生についてはその映画の中でも触れられていて
知る機会があったのですが、
今回の自伝では映画とはまた違った視点からサルガドに接することができました。
サルガドといえば
アフリカや南米などを
モノクロの写真で撮った人、
というイメージでとらえている方も多いのではないでしょうか。
この本の中では
彼にとって、モノクロ、白と黒の世界での表現がいかに必要で、
モノクロじゃなければ表現できない世界、
彼のモノクロの選択の理由なども語られています。
私はカラーの写真も大好きで
うちにはアメリカのニュー・カラーという時代を作った作家さんたちの写真集も何冊もあって、なんども観たくなる作品も多いのですが、
モノクロはモノクロで、大好き。
以前、水中写真家の巨匠、中村征夫さんのトークショーに行った時、
沖縄のグルクンを追う漁師たちを撮ったときは、モノクロじゃなくちゃ表現できないと思って、モノクロを選択した、とおっしゃっていました。
カラーにはカラーの
モノクロにはモノクロの
それぞれでしか表現できない、伝わるものって
あるんですよね。
おもしろい。
サルガドは、
状況、被写体として、
アフリカの悲惨な現状を撮影したりもしているので、
フォトジャーナリストのように言われたり、
実際、生活のためにいくつかジャーナリズムが必要な雑誌や新聞、団体などに提供する写真があったりもしてきたようですが、
人間、そして地球、この私たちが暮らす世界にあるものは
すべてが根っこでつながっているのだ
という愛を基本の軸として
常に撮影をしてきた作家。
軸がぶれていないから、ずーっと、
サルガドらしさというのが響いてくる。
観れば観るほど、じわじわ効いてくる感じがします。
地球への愛
生命の輝き。
あらゆるものから発せられている
かすかな輝きをも見逃さず、
ともすれば表面的な何かに隠されがちな光を
サルガドはシャッターを切ることでとらえ続けているのかもしれないですね。
我が家にある
サルガドの写真集は
"AFRICA"
と
"WORKERS"
サルガドの写真集は
どれも1冊に収められている枚数がとても多くて
図鑑のようにずっしりと重く大型本が多いので、
なかなか一気には買い足せないのですが、
動物たちと地球を捉えた"GENESIS"もそのうち欲しい1冊です。
この"GENESIS"のロケの様子は映画でも出てきますし、
この自伝本でも触れられています。
ということで
2016年の55冊目
9月の5冊目でした。
写真集からよい刺激を得たのですね。また、写真から伝わるインスピレーションなどは、何らかの形で仕事にも活かせそうですね。