「複製技術と美術家たち」@横浜美術館

滑り込みで

「複製技術と美術家たち -ピカソからウォーホルまで」

を観に行ってきました。

横浜美術館は年パスを愛用中なので
一度の企画展を何度か観ることもあるのですが、今回はたまたま横浜に行くタイミングが、運悪く木曜日のことが多く(横浜美術館は木曜日が休館です)、あっという間に企画展終了の日が近づいてしまったのでした。

さて

むかしむかし

ヴァルター・ベンヤミンさんという人が

複製技術について論じた本があります。


その本はいまもなお
古さを感じさせるどころか
現代における複製を考えるときにも
十分役立つヒントが満載な内容です。



ヴァルター・ベンヤミン
『複製技術時代の芸術』

わたしは去年この本を初めて読んだのですが
コピー、複製 が
にせものと、なんとなく似た雰囲気で捉えられるのは、
こういう背景もあって、なのかなあって思いながら読んでいました。

名画は買えなくても
コピーのポスターなら買えそう、飾れそう、とか。

ペラペラのコピーを飾るのが恥ずかしいから
カレンダーの柄とか、ジグソーパズルにして、
本物じゃないけどカレンダーで暦を見たかったついでにとか、パズルをやりたかったからねとか、他の理由を探した上で飾ろうかな、とか。

原画のコピーによるクオリティの低下や存在感の消失を、
これはあくまで商品グッズという言い訳でカバーしたり。


コピーには場合によっては
なんとなく後ろめたいものを
感じることがあるのかもしれませんね。


ベンヤミンが唱えていた
アウラ
というのは
唯一無二の存在から発せられるもの。

一枚しかない手描きの絵
一体しかない彫刻作品
そういうものにアウラが存在して、
それに対する尊敬の念が美術品の価値を担っていた。

なのに、
写真という複製技術が出てきたことによって
アウラや価値基準が崩壊したという話。

ざっくりだけど。


現在、アート作品としての写真や版画作品など複製可能なものには
エディションというものがある場合が多いです。

エディションは
世界に何個、その作品が存在するのかを数字で示したもので
5分の1とかかれていたら
いま目の前にあるのは、世界に同じものが5枚ある中の1枚目、ということ。


エディションが少なければ
当然ながら希少なもので、
値段が高騰することもあるようです。

このエディションの存在によって
複製技術を使った作品たちはアウラを取り戻したのではなかろうか、という気がしています。
作家本人が複製を手がけ、監修し、認めたものだけにサインをして、エディションの数字を書き込む。


さらに今回の展示では
同一の作家の
手描きの油絵と、複製技術作品、
たとえばシルクスクリーン作品やリトグラフ作品を
隣同士に並べて展示しているのも
いくつか見られました。

イヴ・タンギーや
カンディンスキーなど
わたしの好きな作家作品も
油絵と複製作品が並べられていたのですが
こういうのを見ていて、

「あなたは手描きの1枚しかない絵と、複製技術を使った作品を見比べて、複製技術を使った方が価値が低いと、本当に思いますか?」

と展覧会側から問いかけられているような展示だなあと感じました。

すぐ隣で展示を見ている方たちが
「これ、コピーでしょう?」「そうそうコピーコピー、本物じゃなくて」
と会話したのが聞こえて

そうか、複製出来る何かを見るときに
人は、世界のどこかにこれと同じホンモノが存在すると、なんとなくイメージしてしまうのかも知れないなあ
なんてことも思いました。


そんな中で
コピーの作品の概念をひっくり返してくれるような作品が
現代アーティストのコーナーに並んでいて


岸田良子さんの
《collect》や《断片/植物》が
とても気になりました。

《collect》はお菓子などのパッケージデザインをカラーコピーして、本の形にまとめた作品。

《断片/植物》は本来、
《断片/植物 京都市伏見区深草藤森町1》という長い作品名のようで、
この住所は京都教育大学の住所。ここにある植物を採取してカラーコピーし、本の形にまとめたという作品です。

本の形になったからなのか
一枚一枚の複製へのこだわりが緻密に感じられるからなのか、
これはコピー機を使っているけれど、
正真正銘のアートだし、圧倒的な存在感を放っているなと感じました。

物として、そこに存在する価値、存在感。
たまらなく美しく
複製できるなら、ぜひして!手にとって開いてみたい!と思ってしまう程でした。


ちなみに岸田良子さん
きしだ、ながこさん
と読むのだそうです。



岸田良子さん
調べたら他の作品もかなり気になるものが多くて、個展があったら行きたいなあと思いました。



横浜美術館
http://yokohama.art.museum/


次のメアリー・カサット展も気になります!



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