ブリヂストン美術館で開催中の
ウィレム・デ・クーニング展
に行ってきて
気になった本を早速読みましたよ

『アーティストたちとの会話 アメリカン・ポップ・アート誕生の熱気』(講談社)
キミコ・パワーズさんへ、林綾野さんがインタビューをしたものをまとめた1冊。
キミコさんはジョン・アンド・キミコ・パワーズ・コレクションという
世界最大のポップ・アート・コレクションを旦那様のジョンさんと共に作り上げた方。
2013年ころからの日本でのポップ・アート展はこのキミコさんの協力なしでは
成功しなかったであろうとう方であり、
あのアンディ・ウォーホルもキミコさんをモデルにした作品を作っています。
(着物姿の上半身アップの絵が有名かな?観たら、「あー!これ観たことある!!」って言う方も多いのではないでしょうか)
さて
この本では
キミコさんのコレクションの中に含まれる著名なアーティストたちとのやりとりが
インタビュアーの林さんとの会話形式でまとめられています。
ホイットニー美術館が100万ドル(存命アメリカ人画家の作品としての最高額)で購入したという《3つの旗》の画家であるジャスパー・ジョーンズの話や、
ヘルス・ナッツと言われるほどの健康志向だったアンディ・ウォーホルの話、
ぐにゃぐにゃした素材で作ったトイレやドラムでも有名なクレス・オルデンバーグや、
コミックの一部を拡大したり、コミックテイストなタッチが象徴的なロイ・リキテンスタイン、
なんでも巨大に包んでしまう地球を舞台にしたランドアートを作り続けた(展示終了後は跡形もなく解体してしまう)クリスト&ジャンヌ=クロード、
トム・ウェッセルマンに、ジェイムズ・ローゼンクイスト、
そして彼らを世に送り出した画廊の主
レオ・カステリ、
ジョンとキミコが大好きだった人たちについて丁寧に語られています。
作品そのものの力があれば、なにかごちゃごちゃ説明する必要はない、ということについて最近考えたことがあって
ジャスパー・ジョーンズの話は、そこにリンクするなあと。
キミコさんいわく、ジャスパー・ジョーンズは
「そして、自分の絵について、絶対に説明しないですね。どんなに仲の良い人にも説明はしない。それを求めても「あなたの思ってることでいいですよ」と言うんです。」
と。
それと同時に
「彼の絵にはさっき言ったように、彼の"思想"がバッチリ入っています。彼の"哲学"がすべて入っている。彼の"感情"がいっばい入っていると思います。」
とも語っています。
作家の生き方そのものが
そこから出てきたものに強く影響してくる。そして、ひとたび、自分の手から離れて作品が飛び立ったのなら、あとは受け手である鑑賞者とその作品の間に広がる新たな可能性に任せていきたい、ということなのかもしれません。
アンディ・ウォーホルはキャンベル・スープの缶を作品にしていることでも有名ですが
初期のころ、ひとつひとつを手描きで200個のキャンベル・スープ缶を描いた作品があります。
その絵を寝室に飾っているキミコさんの話によれば
「ええ、これはね、彼の初期の作品で、まだ有名になる前のものです。アンディはこれを描いてキャンベルの会社に持って行って、「買ってちょうだい」と言ったんですって。「いらない」と言われたそうです(笑)」
つい先日もオークションでとんでもない値段でプレスリーを描いた絵が落札されたアンディ・ウォーホルにもそんな頃があったんですね。
生のアートを、自分で、目の前にしてその空気とともに感じることの重要性を
美術館に行くたびに感じるのですが
クリスト&ジャンヌ=クロードの話のところでは
「実際の作品を見ずに、ドローイングだけを見ていても3分の1くらいしか、その素晴らしさは伝わらないと思う。だから『Running Fence』でもなんでも、そのドローイングに対する評価は、作品を見た人と見ていない人では、本当に違いますよ。」
とも語っています。
クリスト&ジャンヌ=クロードの作品は主に地球を舞台としたインスタレーション作品だったので、特に強くそう感じるだろうなとも思いますが、
本物を目の当たりにした時にしか感じることのできない心の動きって、絶対にあるよなあっていうのは、
わたし自身、強く感じるところです。
知ればもっと楽しくなる。
アート作品も、作家も。
いい一冊でした



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