(サンクチュアリ出版)
前回紹介した本の著者
サフィア・ミニー(Safia Minney)さんが
フェアトレードやオーガニック、アップサイクルなどに関連した
エシカル・ファッションを仕事としている人たち50人にインタビューした本です。
フルカラーで作られたこの本は
ファッションに興味がある人なら
読んでいてきっと興味を持つだろうし、
様々なエシカル・ファッションのコレクションも写真で見て楽しむことが出来ます。
この本を読んでいて
まず、世界中にこんなにも
ファッションとフェアトレード、エシカル・ファッションについて
情熱的に考え、エネルギーを注いで、動いている人がいるんだということが
心にびりびりと響いてきました。
先日書いた
日本人のエシカル・ジュエリーデザイナー
白木夏子さんもこの本の中でインタビューを受けていますし、
他にも日本人だけをみても
様々な立場から
いろいろなアプローチを試みている人が
こんなにもいたんだと思いました。
バングラデシュの生産者が刺繍をした生地を使用して
コラボレーションのサンダルを作り上げたTATAMI×People Treeの商品。
パタゴニア日本支社長の辻井隆行さんのインタビュー記事では
パタゴニアが作るコットン製品が全てオーガニックコットンで作られていることも知りました。
商品がどのような流れで製品化されているのか
最初から最後までの透明性が求められる中、
パナマ帽ブランドの「Pachacuti」創設者のキャリー・サマーズ(Carry Somers)の記事では
消費者が携帯電話でバーコードを読み取ることで製品の過程について知ることができる「ジオ・フェアトレード・プロジェクト」というものがあると述べられていたり。
これはオーガニック・コンシュルジュの勉強をした時に出てきた
オーガニックの食品のトレーサビリティに似た方式だなあと思いました。
野菜などの商品に、全ての情報を記載しきれない場合、
バーコードやリンクなどを表示して、商品そのものに表示しきれなかった情報を
リンク先で確認できるようにしても良い範囲がある、ということだったのですが、
ファッションについても、確かに、と思います。
いろいろな過程を経て手元に届く商品。
その通過経路を全て商品タグなどに書くことは
情報量として難しい場合が多いかもしれませんね。
そんな時でも、こうやって先端技術とうまくリンクさせていくことで解決できる方法というのも、これからは一般的になっていくのかもしれません。
エシカル・ファッションの大きな動きは
ようやく、ぐんと走り始めたばかり、という印象があります。
そんな始まりの中でもこれらの仕事に尽力している人たちは
ずーっと先も見ているんです。
ファッションライター兼クリエイタ―のリーヨン・スーさんは
「近い将来、すべてのファッションがサステナブルになり、サステナブル・ファッションについて語る必要がなくなる日が来ることを願ってやみません!」
と述べています。
持続可能なファッションの形が
ごくごく当たり前の存在になれば
わざわざそのことを取り上げて特集を組んだり、
大きな声で主張し続けなければならないような状況が
なくなるということなんですよね。
少数が一般的になるのには
たくさんの時間と労力、情熱、エネルギー、資金などなど
必要なものが山のようにあると思いますが、
それでも今、確実に前に進んでいるように感じます。
「エシカルの考え方は人により違う」し、日本語訳しても「倫理的なファッション」となりなんだかちゃんと意味が伝わらないように感じられてハブサイトを作った竹村伊央さん。
たしかに、フェアトレード、というと
公正な取引と訳していても、
納得できる部分もありますが、
概念的、哲学的な範囲も広がりを見せる言葉になってくると
なかなか定義は難しい部分もありますね。
ちなみに著者であるサフィア・ミニーさんは
「「エシカル・ファッション」は、80年代のイギリスで「倫理的消費」を呼びかける運動から生まれました。フェアトレードはもちろん、オーガニックやリサイクル、さらには原料に使われる動物の飼育方法など、環境、人権、動物の権利などさまざまな点において責任を果たしてつくられるファッションを総称しています。」
と述べています。
とても新しい動きなのかと思いきや
歴史は80年代にまでさかのぼるのですね。
フェアトレードやエシカルについて様々なものを読んで行くと
イギリスが登場する機会は大変多いのですが、
そもそもの始まりの国でもあるということで、なるほど、納得です。
この本を読んでいると
エシカル・ファッションには
様々な取り組み方があることがよく分かります。
それぞれの人たちが
それぞれの得意分野を活かして
それぞれのエシカル・ファッションを提案しているんです。
やり方は1つじゃないし、
出来あがる形も、もちろん1つじゃない。
共通しているのは
作りあげられた物の背景で
誰かが猛烈に苦しんでいることのない
みんなが笑顔でいられる物を、という気持ち。
なかなか一口に言えない事だし
伝わるのは難しいと、この本の中でも
多くのインタビューされた方々がおっしゃっていますが、
本物力っていうのは、
じわじわとでも
ちゃんと伝わって、広まって、
そして残って行くものだと信じています。
地球に生きる全ての生命が
笑顔で起きて、安らかに眠る場所がある毎日が訪れますように。
確かに、難しいですね。。。