山ボーイ ~栗駒山~

宮城県『栗駒山(標高1627m)』

***

午前5時
大地森コースを選択した僕らは
世界谷地入口からてっぺんを目指した



これ以上の重たい荷物はゴメンだが
はじめてのコースなのと微妙な曇り空で
一抹の不安がプラスで
圧し掛かっていたのは確かだった

山に入るとすぐに
数億本もの原生ブナたちが
汗だくの僕らをそれぞれの隙間から
不思議そうに首をかしげて見つめてきた

きっと彼らからすれば
人間なんて一瞬の生き物で変な行動をする
虫みたいなものかもしれない

だけどね みんな与えられた命を
自分なりに一生懸命生きてるんだよと
原生ブナたちになぜか伝えながら
僕は歩いていた



1時間ほど登った頃だろうか......

突然雨が降ってきた
これはマズイと僕らは顔を見合わせた

続けて空を一斉に見上げると
これ以上降らないだろうと全員が感覚的に思った
案の定雨は数分後に止んだ

はじめは吹いていなかった風が
途中から吹き始めた

「あーこれは心地よい!あー気持ちよい!」
サラサラ ヒューヒュー ホーホケキョ ♪

まるで " ようこそ栗駒山へ " と
僕らの登山を歓迎しているかのような演奏だ

木の葉と風と鶯が協力して音を奏でるそれは
山の番人たちからの思わぬプレゼントだった

今日の僕らの一生懸命を応援してくれている
そんな気もした
どことなく体も軽くなっていた



道は決して楽ではなかった
そういう道を選んだから覚悟はしていたが
想像以上だった

凸凹かつ狭隘な道を
ひたすら6時間以上も歩いた

どうやら疲れは徐々に貯まるもの
感動は突然訪れるもの
さらに感動は疲れを一気に飛ばすものらしい



栗駒山には見所がたくさんがある
その一つが『御室(おむろ)』という場所だ

そこは雲の上の " 美 " の楽園だという
「はー、なるほど」その理由がわかった

見事な見事な雪渓が僕らを待っていた
思わず声がでる「すげー!」

何とも言えないその美しさその力
人を魅了するとはこういうことである

山登りはいつもたくさんの感動が待っている
こうして人は山の魅力に
ますますはまっていくのだろう

歓迎の森の次は魅惑の雪渓がしばらくの間
僕らの火照った体を柔らかく冷してくれた



遭難するかもしれない
水分と食料はいつも各自十分に持参する

災害はいつどこでどんな形で発生するかわからない
自然を決してなめてはならない
消防士の僕はそれを身を持って理解しているし
それを多くの方々に伝える役目があるのである

ちょうど11時頃僕らは御室で昼食にした
午前3時頃に起きて自分でにぎったおにぎりは
三角形だけどはっきり言って塩加減が足りない
妻のにぎるおにぎりの味が恋しく感じた

2個あるおにぎりを1個食べ終わった時
仲間からサプライズプレゼントがあった
僕らのリーダーでカメラマンのKさんから
「ほい」とカップ麺が渡された

前回の早池峰山の登頂で
あったらいいねを話し合って
その一つに挙がったのがカップ麺だった

ここは標高約1400m地点
山で食べるシーフードヌードルは格別だ
もう1個のおにぎりはスープと一緒に
お陰様で美味しく食べることができた



スタートから7時間
僕らは無事山頂に辿りついた
山頂は残念ながら曇りで雲に包まれていたが
そこはまるで真っ白でふわふわな
ドーナッツの中心にいるような感じで悪くない

山頂には登山初心者でも安心して登れる
中央コースを登ってきたであろう
幼い子連れの家族や今時の山ボーイや山ガール
羨ましいほど健康的な年配の方々がたくさんいた

この山は老若男女に愛されている
僕もこの山のようになりたい
そんな心境に一人包まれていた

僕らは山頂で恒例の記念写真を撮った



下山は中央コースを選択し
わずか45分で駐車場に着いた

そして仲間と「今日もありがとう」と
握手を交わし現地で解散した

帰り際ふと振り返った
山にも「ありがとう」を伝えたかったからだ

すると山から
「ありがとう」が心の中へ木霊してきた

待ってろまた会いに来るよ
誓い

僕は山をあとにした





SOGOOD*SOGOTO

コメント

暑さも忘れ、山のお話に引き込まれました!!

山の番人が語りかけたり、山と対話されたりと感動的です!!

後藤さんの文章から命、山の懐の広さ、山の厳しさ、自然の力を感じました。

雪渓のお写真ありがとうございます!!冷気が舞っているところに魅せられました。

…あーぁ…私、この感動をお伝えしきれていません。言葉が出てこなくて、もどかしいです。
これからコメント力を鍛えます!!

2013年08月14日

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