仏師・遺作展のこと。

先日仏師の金丸悦郎さんの遺作展へ行ってきました。私は金丸さんと同じ小さな町の同郷で育ち、昔からよく知る地元に所縁のあるお寺での遺作展ということでご縁を感じました。
金丸さんの掘る仏像や彫刻は、木の素材から適材適所を選び、細やかな装飾や表情や仕草の一つ一つまでも精確に美しく彫り、魂を宿らせます。いのちが有り有りと随所に浮き彫りになっている作品の数々。木が本来もつ生命力。いのちの教えを説いてくださる仏像様の尊いお姿。そして丹精を込めて彫りつづけ、仏像の姿に込められた金丸さんの生命の証し。
あらゆるエネルギーのいのちの根源が集約され豊満に満ちていました。
見れば見るほどに仏像の表情の穏やかさ、仕草、その細やかな曲線は昔から伝えられている仏教の教えを諭しているお姿そのもので、その仕上がりの美しさへの驚嘆と、仏様の教えをいままさに説いて下さっているかのようでした。
金丸さんの創る仏像を通して、人々は教えを導かれ、慈しみの心を感じ、いのちのありがたみに感謝し、万物の命の尊さを知るのだろうと思うと、仏像を創り上げるという職人の為す技の深みを感じました。
なかでも心に沁みるように感動したのは「古武士」という作品でした。崩壊・創造・維持と題された三つのお顔があり、それは宇宙に存在する万物の生命の在り方、人間のもつ徳や邪を思わせる作品でした。
そして私は木の質を選ぶところから金丸さんの作品への思いが込められているように感じ、木の質感を選ぶことから始まる職人の技の綿密さと緻密な道のりに思いを馳せました。
その木は古木を使っているように見え、荒々しく削られている箇所もあり、古木のもつ本来の生命力やエネルギーを生かしたまま反映させているようで、ほかの仏像や迦楼羅の像とは違うもの感じました。重みが刻まれており、よく眺めるほどにその凄まじい生命宇宙の営みが垣間見えてくるようでした。この作品は金丸さんの遺作であり、並々ならぬ情熱と仏様を彫り続けることにより崇高された魂がその仏様のお姿に宿ってるのではないかと感じ、いのちの真髄そのものが彫り込まれた作品のように感じました。
私が幼い頃から祖母によく諭されていた仏様の教えをもう一度感じさせてくださり、万物に生ずる宇宙の営みを原点から振り返り、そして静止している仏像にもかかわらず懇々と湧き上がる生命のエネルギーの動脈を感じる遺作展でした。尚、それだけのものを感じながらも、すべての仏教のどれを見ても穏やかな思いが心に残るのは、そのエネルギーが静かに昇華されている証しだと思ったのです。

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