老樹

清澄な木々の吐息は、柔らかな木漏れ日のようにそっと私たちを包み込み、潤った空気を与えてくれる。
息を吸って吐いている、ただそれだけで全身から風が吹き抜け、足の裏を伝って大地に返還されていくようだった。
一本の老樹に一匹のかたつむりが這っていた。
この老樹には幾重にも年輪が丁寧に重ねられ、生きてきた歴史がきちんと輪を描きながら記されていた。
一つ一つ数えたら目眩がしそうなくらい何千という模様が
波紋のように老樹にはきちんと刻まれているのだ。

彼らは、一年をとても大切に過ごしている。
自らの手で体に年輪を刻む程、月日を価値のあるものとして生きている。
そして、刻む事を止めない。
生まれたときから枯れ果てるまで、こうして一年が過ぎていくたびに年輪を描き続けている。
それが私には、何ともいえない切なさと、宿命と、老樹の生命力に対する尊厳をひしと感じ、決して人間の手によって支配し、制御してはならぬものだと思い、崇敬すべき尊い魂が彼らにはあるのだと思った。

森の老樹は、森の何もかもを知っていて、生物の何もかもを知っていて
そして私たち人間の何もかもを知っている。

森の老樹は、繁栄も衰退も血も争いも真も誠も知っている。
生きる事や死ぬ事も、幸せというものの姿も、富も豊かも知っている。
彼らはその年輪の刻みの数だけ、幾度も傷つき、涙を流し、ときには崇高な魂を尊重し守りながら何千年と生きてきた。

老樹は心眼ですべて悟っていきているのだ。
その生気は肉体は衰えても尚、栄えているようだった。

コメント

Helnutさんへ
コメントありがとうございます。
老樹の生きる姿勢や佇まいの美しさには圧巻されます。
私たちはどれほど小さく、浅はかで、命の尊さのほんの一部でさえも
まだ知らないのだろう、と。
森との共存は、人が生きていく課題でもあり、守るべき義務だとも思います。
近代化が進むほど純粋な自然は失われますが、
私たちは本来自然の恩恵を受けて誕生した生き物ですし、
この進化してきた人の知恵と技術は、自然との共存、森の保護や
ビオトープなどの森林保護に役立つといいなと思います。
まずは、Helmutさんのように、自然を尊重し愛することのできる
美しい心を大切にしていくことが
地球に感謝と愛を残せる、大切なことのように思います。
ありがとうございます。

 いしがみ ゆりえ 2012年09月01日

屋久島のスギは2000年から3000年も生きているみたいですよね。私たちはせいぜい100年。そんな人の欲求のために老樹を切ることがあるとしたら、そんなに悲しい事はありませんよね。人が手を入れたがために壊れていく自然、感謝の気持ちを持って、共存できるそんな世の中になるといいですね。
私も神社などで老樹を見ていつもパワーをたくさんもらってますよわーい(嬉しい顔)

Helmut 2012年08月30日

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