何かがあるの?何もないの?
父という身近な存在、
一緒に暮らしてきた鳥や猫などの動物たち、
いろいろな命の終わりを見つめるにあたり、
小さい頃からふと考えることがあったテーマです。
『天国からはじまる物語』(理論社)
Gabrielle Zevin(ガブリエル・セヴィン)さんの小説を
堀川志野舞さんが日本語訳にされた本を読みました。
たった15歳で交通事故により亡くなった主人公のリズ。
この物語は彼女が亡くなった直後から始まります。
リズが亡くなったあとに目覚めたのは
死んだ人が住む場所 <ドコカ>へ向かう船の中。
<ドコカ>では亡くなった時の年齢から、地上で生きていた時とは逆に若返って行きます。
最後は赤ちゃんにまで若返り、再び生まれ変わることになるのです。
<ドコカ>ではリズが生まれる前に亡くなった祖母にも会えたり、
残してきてしまった愛犬にも後から会うことが出来たり。
でもリズは、生きていた時が全てだったと感じ、
亡くなった今の目の前にあるものを全て見ようとはせず、
もうどうすることもできない、生きていた時の場所、そこにいる人たちにこだわり続けてしまいます。
地上の様子を覗き見ることができる<見晴らし台>の双眼鏡に
何日も、何時間もかじりつき、
優しく見守ってくれている祖母や周囲の人たちの愛情に心を開こうとはしません。
この物語はそんなリズが亡くなった15歳から赤ちゃんへ逆行するまでの物語です。
「人生」とは何なのか。
今、幸せなのか。
<ドコカ>に到着して、リズは
生きている時は幸せだったのかと質問され、
今は幸せなのかとも自分自身に問いかけるようになります。
幸せとは何なのか。
人は一生の中で
やりたいこともたくさんあるし、
その中で出来ないことも、もちろんどうしてもたくさん出てきてしまうでしょう。
リズは最初は
その出来なかったことばかりに目が行ってしまい、
あれもやりたかったのに、これもやりたかったのに、出来なかった、と悔やみます。
けれど、見方を変えれば
出来なかったこと以外にも幸せな、楽しいことはたくさんあったし、
素敵な時間を過ごしてきたことに変わりはないのです。
リズが<ドコカ>で過ごすうちに導きだした答えを
自分をひき逃げしたタクシー運転手が<ドコカ>に来た時に語ります。
「人生は時間ではかるものじゃないわ。大切なのは長さじゃない、大切なのは質よ。」
どう生きるのか。
幸せな人生であるのか。
それは自分自身の心の選択によって
大きくことなってしまうということ。
もしかして、今まで何のいいことが1つもなかったと
心の底から暗い気持ちになっている人でも
この先のことはわからないし、
これから先に、人生一生分を覆すような
最大の幸福が待っているのかもしれないし、
もしかしたら気が付いていないだけで、それはもう目の前にあるのかもしれない。
心の在り方で
ぱっと見の状況は同じでも
目の前に広がる景色は大きく異なるものになるはずです。
いつも笑顔で前向きに。
そう自分を励ますだけでも
違うことだってあるんだよなと
「人生」とその歩き方について、考えてしまいました。
人の一生は、生まれ出た時から決まっている、とお坊さんが
昔言っていました。
哲学的なことはよく分かりませんが、今を大切に生きること
である、と思います。