この言葉に魅かれて、図書館で借りてきた本。
『頭のうちどころが悪かった熊の話』(理論社)
安東みきえさんが書かれた作品です。
絵は、下和田サチヨさんが描かれています。
このタイトルにも強烈に魅かれますね。
どの話も奥が深くて、
いろんな受け止め方が出来るし、
うーんと考えさせられることがいっぱい。
すべて動物たちが主人公です。
「ヘビの恩返し」では、
食べると過去にこだわるようになる、「カコの実」と、
食べると未来のことしか考えられなくなる、「ミライの芽」が出てきます。
ヘビのお父さんは「カコの実」をたべ、お母さんは「ミライの芽」を食べてしまい、
子供は途方に暮れるのですが、
最後、正気に戻ったお父さんヘビが、お母さんヘビを正気に戻そうとします。
「そうです。ミライの芽など、キレイさっぱりつみ取ってやるのです。そうしたらまた、日々のくらしを大事にするりっぱな妻にもどるでしょう」
と言うお父さんヘビ。
難しいですね。
極端ですが、
どれも正しいし、複雑でもあります。
過去も未来もどちらも必要なことでもあるのだけれど、
あまりにもとらわれすぎると、今を見失う。
かといって、過去を振り返らず、未来への希望もなければ
今を進展させることが出来るのだろうか…という問題にも直面します。
「池の中の王様」では、
おたまじゃくしとカエルが出てきます。
ご存知の通り、カエルの子供は、おたまじゃくしですよね。
子供と大人の姿が似ても似つかないくらい違っています。
「自分の目でしか見えないんだよ。なにがホントかなんて、だれにもわかりっこないじゃないか。でもわかっているのは、ぼくの世界では、ぼくが王様ってこと。(後略)」
「見えているものが違ったって、ぼくはきみが大好きさ。ぼくの中の王様がそういってんだ」
世に出て、人生を泳いで行けば
いろんなことに出会います。
大切なこと、大変なこと、
いろいろです。
その中で、自分で見て感じたことを、しっかりと信じる芯を忘れないこと。
そんなことをカエルの子に感じました。
わがままとか、我を通すとかとは違うんですよね。
むやみに流されないとか、
自己を見失わないとか、
そんな感覚と言ったらいいでしょうか。
イソップのような現代の日本人作家による寓話。
こんなのも、たまに読むと面白いなと思います。
図書館や大型書店にあると思いが、戦前の修身や國語の教科書は、いろいろと寓話があり面白いですよ。ほとんどが善行や戒めですけど。