自由と優雅『ブランケット・キャッツ』

日々の中に沸き起こる
悩み、もんもんとした思い。
誰かに相談したり、話したりするだけでも
楽になったり、解決の糸口が見つかったりしますよね。

けれど、それを聞かされる相手のことを考えたり、
話す内容によっては、誰にも聞かれたくないことだったり、
なかなか相談できずにいることも、
いろいろな毎日の中では出てくるかもしれません。

でももし相手が自由気ままな猫だったら?
どうでしょう。

『ブランケット・キャッツ』(朝日新聞社)
重松清さんの小説を読みました。

猫を2泊3日でレンタルしてくれるお店。
いろんな猫が自分専用のブランケットと共に、様々な家にレンタルされていきます。

私も昔、最大で3匹の猫たちと暮らしたことがあり、
犬や鳥と同じくらい猫も大好きです。

猫は自由で、きまぐれ。
人に目的もなく媚びたり、ご機嫌をうかがうようなこともしないし、
気も使わない。

だからこそ、人間も勝手に猫に話しかけ、
ニャーという返事を勝手に解釈したりする。

犬のように飼い主をまっすぐ見つめて、しっぽを全力でふって、
嬉しさを表現したり、機嫌の様子をうかがうことも
猫にはあまり見られないことです。

危険な空気を察すると、いつの間にかひらりと逃げて、
良さそうな時や自分の気分がいい時だけ、
いつの間にか傍に寄ってきていたり。
そんな自由きままなところも猫の魅力だと思います。

ブランケット・キャットを借りる人たちは
ひらりと我が家に訪れる2泊3日の猫に、
何かを期待するわけでもなく、情が移り過ぎることもないんです。

ただ「ふぅん」とか「へぇ」とか言った具合で、
なんとなく傍にいてくれたら十分、
むしろその方が気持ちが楽だ、
なんてところかもしれません。

自分が吐き出した苦しみを
相談された相手になんて思われるだろう、
気まずくなったりするだろうか、
そんな余計なことを考えずに接することができる相手。
勝手なものですが、猫に話しかける時に
明確な答えを猫に期待して、求めている人はいないはずです。

いろんな猫と借りた家の話が連作でまとめられている本ですが、
「旅にでたブランケット・キャット」の章だけは
猫の目線で語られています。

「ひとりきりと、ひとりぼっちは、似ているようで違う。」

孤独を愛し、自由人に見える猫に
このセリフを言われると、
自由さが我儘ではなく、何かを超越した余裕にも感じられます。
孤独と自立も違うし、孤立と個別も違う。
猫の優雅さの秘密かもしれません。



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