ぼろ泣き本『世界から猫が消えたなら』

ずっと読書を我慢していて
解禁!となり
1冊目に読んだ本が

『世界から猫が消えたなら』(マガジンハウス)

川村元気さんの小説。


前から気になっていたんです。

本屋さんでも目立つ場所に並べられていることも多く
先日発表されました、本屋大賞のノミネート作品でもあります。


小説の主人公は
30歳、男性、独身
職業は郵便配達員。

ある日突然、医者から脳腫瘍だと伝えられます。
しかもステージ4。
余命は長くて半年、ともすれば1週間後にも…と言われるところから
彼自身によって語られる形で、物語は始まります。

そんな命の宣告をうけた彼のところにやってきたのは
1匹、いや、一人の悪魔。
見た目は彼自身にそっくりのその悪魔が
なんと彼の命の期限は明日までなのだと言います。

そして不思議な取引を持ちかけるのです。

「世界からひとつだけ何かを消す。その代わりあなたは1日の命を得ることが出来るんです。」

彼は1つずつ、世界から何かを消して行きます。

最初は電話を消しました。
最後に電話をしたのは、昔好きだった恋人。

次に消したのは、大好きでたくさん観た、映画。

映画のシーンでは
日本を代表する現代アート・写真家である杉本博司さんの「劇場」シリーズ作品の話も出てきます。




ちなみに
杉本博司さんは
1970年代からニューヨークを拠点にして活動している芸術家で
「劇場」は、アメリカの映画館の内部を写した作品。
それも映画1本分を上映する間、ずっと露光して撮影したもので
結果として真っ白いスクリーンが作品にはプリントされることになるのです。

美術検定でお勉強したことが
意外なところで役に立って
にんまり。






そしてこの物語の中で
彼は何かを消しながら、必要なもの、消すとどうなるのか、
自分の周りにあること、
今まで当たり前だった存在について考えて行きます。


もう何年も前に亡くなってしまった母親からの手紙のシーンでは

私はこの本をカフェで読んでいたにも関わらず
ぼろぼろ泣いて泣いて
涙を止めることができない程でした。

お母さんって
特別なんだよなあ。
偉大だし、
存在そのものが
力強いし、優しいし、あったかくて。


そして
離れて暮らしていても
いつもその存在が支えとなり、原動力にもなる
家族の存在。


「家族って「ある」ものじゃなかった。家族は「する」ものだったんだ。」


生まれた瞬間から
選ぶことができない存在として
そこに居た家族。
でも、歩き始めたら
そこからはみんなで作って行くもの。
それが家族。
「ある」んじゃなくて「する」。

家族が居て当たり前なんじゃなくて、
家族になるために、何かをし続ける。

思い続ける。
愛し続ける。
大切にし続ける。
何かを共有し続ける。
お互いを分離しても繋がり続ける。

見えない糸で
結びついて居続けようとすること。

家族。



彼の母親が生前に言っていた言葉。
「ほとんどの大切なことは、失われた後に気付くものよ」

彼は悪魔がやってきて
1日に1つずつ何かを消しながら自分の命をのばしていくことによって
大切なこと、
存在して当たり前だと思っていたことが消えたらどうなるのかについて
考え続けていきました。

大切なもの。
それが大切だったことにすら、気が付けずにいたこと。


今日1日を幸せに味わって

そばにいてくれる家族に感謝をして

たとえ明日が来なくなっても
多少の後悔は仕方が無いにしても

まあ、よかったよね、と思えるような

そんな日々を
積み重ねていきたいと思う作品でした。

コメント

杉本博司さんの作品を一度だけエルメスで見たこと有ります
矢張、まりさんの仰る様なテクニックで朝焼けの風景を写真に収めそれをエルメスのカレにプリントした作品でとても美しかったですわーい(嬉しい顔)
ニューヨーク在住の作家さんですが伊豆にもアトリエを持っていて帰国した時のみ制作した作品で何でも伊豆の朝焼けの僅かな時間でしか綺麗なプリズムが出ないそうです
題名から『100まんかいいきたねこ』と云う絵本を思い出しました
一匹の猫が主人公で何度も転生して無限の生命を得るのですが最後に最愛の恋人に先だたれて初めて哀しみにくれて泣くと云う作品です

命とは本当に大切な物とはそんな事を時には考えて見ることは大切ですね

炎の人 2013年01月30日

大切なことを教えてくれる本なんですね☆

見かけたら読んでみますね♪

てる 2013年01月29日

まりさん、今日は、いい本に出会う事が出来て、
よかったね。クローバー

また、本から得た事を大切にして、これからも
素敵な人生を送ってね。☆

まるみる 2013年01月29日

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