『かばん屋の相続』

以前読んだ『下町ロケット』がとても面白くて
同じ作家さんの文庫オリジナル作品を読みました。

『かばん屋の相続』(文藝春秋)
作者は池井戸潤さんです。

今回は『下町ロケット』の時のような長編作品ではなく
6つの短編作品から成ります。

テーマとなっているのは
中小企業と銀行員の物語。

「十年目のクリスマス」
「セールストーク」
「手形の行方」
「芥のごとく」
「妻の元カレ」
「かばん屋の相続」

それぞれの物語は
全てがハッピーエンドではなく、

ああ、そうか…

と、それぞれの章を一気に読み終えて、一息、ふっと吐き出すような感じ。

笑って綺麗に片付くような物語ではないもので
なんだか良く分からないような、もやっとしたものが少し心に残ったり。
でも、
人生はそれでも続いて行くし、
時はそれでも流れて行く。

絶体絶命の苦難から立ち上がる人、
大事なものを守るために何かを犠牲にする人、
信じる人、だます人、
勝ったと思っていたら実は負けていたと挫折を味わう人、

苦しい時にこそ
それぞれが本当に一番大切にしたかったことは何なのか、
中心にあるものが見えてくるような気がします。


文庫につけられた帯の言葉は
「いろいろあるさ。でも、それが人生だ。」

まさに
それぞれの立場での紆余曲折、苦悩も描かれているのですが、
終わり良ければ全て良し、とは行かなくとも
共通して流れているものがあります。

それは
正義は勝つ

ということ。

最後の最後に笑える人は
人をだましたり、
何かを無理やり奪おうと悪事を働いたりした人ではなくて、
苦労はあっても真っすぐ向き合って頑張って来た人。

そういう芯が流れている作品集だからこそ、

いいことばかりじゃないけれど、よし、また頑張ろう

という気持ちにさせてくれる作品たちなのかもしれません。

短編集でありながら、
それぞれの章が
ずっしりと来る本です。

コメント

正義のない時代に、正義を求める心は大切ですよね。

また、いつも心に恥じない生き方をしたいと思っています。。。

まるみる 2012年04月05日

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